フィアット500 詳細データテスト 十分以上の動力性能とハンドリング 航続距離と快適性はほどほど

公開 : 2022.02.05 20:25

結論 ★★★★★★★★☆☆

フィアットの絶頂期はだいぶ過去の話となったが、この新たな電動バージョンの500をもって、ついに返り咲きを果たすこととなりそうだ。

エクステリアはもちろん、インテリアもこれまでどおりひと目でそれとわかるキュートなデザインだ。しかし、レトロ調でありながらどこから見てもモダンだ。500ほどスタイリングを重視した物件としては、ほぼ大成功だといっていい。

結論:これは単なる電動シティカーではない。歓迎すべき原点回帰と言えるクルマだ。
結論:これは単なる電動シティカーではない。歓迎すべき原点回帰と言えるクルマだ。    WILL WILLIAMS

とはいえ、このクルマの魅力はそこにとどまらない。所有し、運転する上でも納得できる一台だ。もっとパワフルで航続距離の長いEVはあるが、この500がそれらに大きく劣っているというわけではない。

また、ボディサイズと回転半径の小ささゆえに、シティカーとしての本分でも満足させてくれる。逆に、シティカーという出自を完全に隠しきれないところもあるが、広く開けた道に連れ出しても、驚くほどいい走りを見せる。

価格帯は広い。それゆえ、比較的手頃なEVとしても、この上なくファッショナブルなプレミアムコンパクトとしても選択肢に入りうる。

EVだからといって、もちろん必ずしもすべてが2t級の巨漢でなければいけない、というわけではない。それを体現するコンパクトEVのランキング上位に、フィアットはいきなり食い込んできた。手に入れやすく、見ても、乗っても、走らせても楽しい一台だ。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

今まで乗ったクルマの中で、もっとも予想していなかったほど楽しませてくれる一台だと感じる場面があった。小さなサイズにレスポンスのいいシャシー、ほどよいトラクションと電気モーターの瞬時に立ち上がるトルク。それらが相まって、自宅周辺の狭い田舎道でもかなりハードに走らせることができるのだ。もちろん、安全に配慮して、制限速度以下で、の話だけど。

リチャード・レーン

500のお知らせチャイムは調子っ外れな感じ。フェリーニの映画音楽なども含んだクリエイティブなイタリアンスピリットにインスパイアされた、というのだが、ちょっとばかりむずがゆくなることもある音だ。とはいえ、イライラさせられることだけはまったくない。

オプション追加のアドバイス

近場を走るだけなら、低価格の500アクションはかなりのおすすめ。オプションを乗せすぎなければ、かなり安く買える。日常の足としてもっと高い利便性を求めるなら、大きいほうのバッテリーはもちろん、ウィンターパックとコンフォートシートパックの追加は必須だ。

改善してほしいポイント

・ブレーキペダルをもう少しだけ右に寄せて、ちゃんとしたフットレストをつけてほしい。
・スパイスの効いたアバルトバージョンの登場を期待する。
・薄っぺらくて指紋がつきやすいエアコン関係のスイッチは要改善。シートヒーターのスイッチもつけてもらいたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事