【詳細データテスト】アルピーヌA110 標準車+αのパワーと足回り より高速向き 高まった満足度

公開 : 2022.03.19 20:25  更新 : 2022.03.27 16:43

マイナーチェンジ直前のA110を、限定車で再度検証しました。ノーマルの足回りと強化版エンジンの組み合わせは理想的に思えますが、インチアップでしなやかさが多少損なわれたのが難点。それでも、ベストに近い仕様でした。

はじめに

スポーツカーのライフサイクル全体を、過去から未来まできっちり把握するのはめったにないことだ。しかし、すでにアルピーヌA110についてはそれがわかっている。

すなわち、欧州市場で最初の1台がデリバリーされたのは2017年で、2024年の早いタイミングには生産を終了する予定だ。生産を行なっている仏ディエップ工場は、それ以降、アルピーヌのまったく新しい電動モデル群を製造することになっている。

テスト車:アルピーヌA110レジャンドGT
テスト車:アルピーヌA110レジャンドGT    JON BRADSHAW

A110後継モデルとなるEVは、ロータスと共同で開発中。さらには、電動ハッチバックであるルノー5のハイパフォーマンス版や、やや大きめのクロスオーバークーペEVも計画されている。そのうちのどれかはディエップ産となるが、すべてがそうなると決まっているわけではない。ほぼ確実なのは、もはや将来のディエップに、内燃エンジン車のために割かれるスペースはないということだ。

ピストンで動くA110の終焉まで、カウントダウンはすでにはじまっている。すでに多くのスペシャルエディションが投入されており、さらにはカップ/GT4/ラリーと、モータースポーツ仕様のハットトリックも決めている。マイナーチェンジ版の発売も目前だ。

そんな中、われわれはこのロードテストで原則的に守ってきたルールを曲げ、旧型になろうとしているモデルの限定車を俎上に載せることとした。それは、これがマイナーチェンジ前においてもっとも完成度の高い仕様だと思われるからだ。今回のテスト車両は、A110レジャンドGTである。

日本市場ではリネージGT2021として販売されたこれは、いうなればキメラのようなモデルだ。中間グレードであるレジャンドの、ソフトなセッティングのシャシーに、サーキット走行も視野に入れた上級グレードであるSの292psエンジンやブレーキ、スポーツエキゾーストを搭載しているのである。

逆にいえば、A110Sから、ハードなサスペンションやレーシーな装備を排除し、よりシンプルで乗りやすく仕上げた仕様だともいえる。この限定車こそ、過去4年にわたりすばらしく光るものの片鱗を見せてきたスポーツカーの完成形ではないかとわれわれは考えるのだが、はたしてそれが正しい見解なのか、検証していこう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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