【詳細データテスト】アルピーヌA110 標準車+αのパワーと足回り より高速向き 高まった満足度

公開 : 2022.03.19 20:25  更新 : 2022.03.27 16:43

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

A110レジャンドGTの運動性について、そのキャラクターは最初のうち、やや混乱したものに感じられた。スピードバンプや荒れた舗装でみせる挙動は、ほかのグレードの一部にみられるほど穏やかではない。少なくとも乗りはじめてしばらくの間、これは高級GT寄りの仕様ではなかったのかと疑問に思うことになるだろう。

ところが、市街地を一歩出ると、このクルマにピッタリの路面を見出すことができる。そこでは、その性質がもう少しハッキリ出るようになる。これは高速ツーリングで長距離を走るのに適したA110なのだ。もっとも、ほかの仕様に比べてのマージンは、ほんの10%ほどだろう。

同じソフトな足回りでも、ホイールが小さい標準モデルのほうが路面不整をより効果的に吸収する。しかし、インチアップしてグリップが高まったレジャンドGTは、よりクイックなコーナリングを可能にする。
同じソフトな足回りでも、ホイールが小さい標準モデルのほうが路面不整をより効果的に吸収する。しかし、インチアップしてグリップが高まったレジャンドGTは、よりクイックなコーナリングを可能にする。    JON BRADSHAW

それでも、ベースグレードに対して、ステアリングは中立でのスタビリティが改善され重厚さが増し、グリップレベルの安心感が高まっている。一定してタイトなコントロールをみせる良好なプライマリーライドと相まって、広く舗装のいい道では一層の自信を持って運転できる。また、高速コーナーではほかのグレードにあった気まぐれさが多少減り、わずかながらもより安定して駆け抜けられる。

しかしアルピーヌは、あえて大幅な強化を図らなかった。そのため、しなやかさとボディコントロールのじつに精密な調和や、コーナリングにおける正真正銘のバランスや安定感が失われていない。

さらに、グリップレベルが高まっているので、ベースグレード以上に自信を持ってスピードを上げていける。レジャンドGTのシャシーは、公道上で前後いずれかの横グリップが限界に達することがなさそうだからだ。

とはいえ、サーキットで極端に負荷がかかると勢いが削がれるのはこれまでどおりで、スロットルを抜いてオーバーステアへ持ち込むには電子制御をオフにする必要がある。

A110 Sと比較すると、結局のところバランスに優れ、ハンドリングの活発さやアジャストの自由度も上回る。これはスプリングとダンパー、そしてスタビライザーがよりソフトな標準車用であることに起因する。安定感重視のアンダーステア傾向が薄まっている、といってもいい。

そのためレジャンドGTは、違う目的を持って仕立て直したというより、単に速いA110といった感覚に仕上がっているのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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