メルセデスAMG EQS 詳細データテスト 楽に飛ばせて快適 低速域は洗練性が不足 質感は不満も

公開 : 2022.06.26 18:25

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

EQSはアッセンブリーラインをSクラスとシェアしているのだが、となるとこの2台のハードウェアはどの程度まで共通なのか興味が湧くところだ。フットプリントに関してはほぼ同じようなもので、EQSのほうが6mm長く、5mmナローだ。ただしホイールベースは、EVの通常モデルでもエンジン車のロング版と同じくらいある。

また、これまでのEQモデルは、よくも悪くもICE用を改修したプラットフォームを使ってきた。EQAEQB、そしてEQCといったクロスオーバーはどれもそうだ。つまりはこの最重要EVともいうべきモデルのEQSまで、バッテリーはその電力を最大限活かすEV専用モジュラーアーキテクチャーを開発することなく、既存品へどうにか押し込んでいたわけだ。

ホイールもタイヤも控えめとは言えない。テスト車はAMG仕様の21インチに、275幅のミシュラン・パイロットスポーツEVを履く。AMG 53にはカーボンセラミックブレーキも設定されるが、テスト車は鋳鉄ディスク装着車だった。
ホイールもタイヤも控えめとは言えない。テスト車はAMG仕様の21インチに、275幅のミシュラン・パイロットスポーツEVを履く。AMG 53にはカーボンセラミックブレーキも設定されるが、テスト車は鋳鉄ディスク装着車だった。    LUC LACEY

このEV専用シャシーの重要性は、EQSの外観に表れている。Sクラスより丸っこく、キャブフォワードで弧を描くシルエットは、3ボックスというよりモノフォルム的だ。これにより、条件つきながら量産車でもっとも低い空気抵抗値を達成している。

並べてみると、2台は無関係のクルマに見える。サルーンというカテゴリーで一括りにすることさえためらわれるほどだ。全体的に見て、EQSはこれ以上の存在感はいらないくらいだが、2019年にフランクフルト・モーターショーで公開されたヴィジョンEQSのようなドラマティックさを、市販車にも期待していたなら、控えめになったと思うだろう。

いっぽうで、控えめとは言えないのが動力系のハードウェアだ。低コバルトの内製リチウムイオンバッテリーは、実用容量107.8kWhと、このクラス最大とはいえないサイズだ。しかし、ヴァレオ・シーメンス製モーターの高い効率と空気抵抗の小さいボディにより、現状の市販EVでは最長の航続距離をマークするポテンシャルを手に入れた。

ポテンシャル、と言ったのは、幅広いモデルレンジからどの仕様を選ぶかで変わってくるからだ。リアモーターのみのEQS 450+AMGラインならば、WLTPサイクルで729kmだが、テスト車のAMG 53 4マティック+では、541kmまで目減りする。

しかし、全車とも200kW急速充電に対応し、理論上は15分で290km分の電力を補充できる。一般的な使い方を考えれば、これで十分ではないかと思われる。

車両重量は、もっとも軽い仕様であっても2405kgあり、前後にモーターを積むAMG 53では2585kgに達する。最高出力は、後輪駆動のEQS 450+が334ps、AMG 53では761psにもなる。

プラットフォームは新開発だが、サスペンションはSクラスとかなり近い。フロントはダブルウィッシュボーン、リアは5リンクで、エアマティックサスペンションと、四輪独立アダプティブダンパーを組み合わせる。

地上高は可変式で、高速域では20mmダウン、40km/h以下の低速域では25mmリフトする。後輪操舵も標準装備で、回転直径はフォルクスワーゲン・ゴルフ並みの10.9mだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事