【詳細データテスト】ポルシェ718ケイマン GT3譲りの6気筒 秀逸なシャシー ポルシェの到達点

公開 : 2022.09.24 20:25  更新 : 2022.10.04 11:57

操舵/安定性 ★★★★★★★★★★

ポルシェのRSモデルが残してきた記録的なラップタイムは、妥協なき走りを予想させる。しかし、ケイマンはこれまで常に、やや中途半端なスポーツカーだった。ハードなシャシーレートや、過度の緊張感を持ち、運動性を極めようという類のクルマだったわけではない。

GT4 RSは、その中間にあるクルマだ。俊敏さやグリップには、標準仕様のタイヤでも際立ったものがあり、スタンダードなケイマンに乗り慣れたひとびとにも特別なものだと感じさせるだろう。しかし、路面の悪いB級道路や、低速域で大きな突き上げがあった場合には、乗り心地が硬くトゲトゲしくて満足できない。ロードノイズもかなり大きい。前後のアクスルにはつながっているような感覚がある。

サーキットでは申し分のないバランスとコントロールを見せるが、公道でもどうにかしなやかさとドライバーとのつながりを保つ。ステアリング越しの手応えは文句なく、コミュニケーションはかなりのものだ。
サーキットでは申し分のないバランスとコントロールを見せるが、公道でもどうにかしなやかさとドライバーとのつながりを保つ。ステアリング越しの手応えは文句なく、コミュニケーションはかなりのものだ。    MAX EDLESTON

そうはいっても、サスペンションは英国のたいていの路面を驚くほどうまくいなす。ボディの挙動は緊密にコントロールしながらも、細かく揺すられるようなことはない。ツーリングでは安定していて、サーキット志向のチューニングを思い知らされるようなケースは減る。ただし、この手の本質を持つクルマでは持て余すような路面状況になったら、話は違ってくるが。

ほかのケイマンのように、ステアリングはほどよいペースだが、手応えとフィールはレベルが違い、路面とのつながりをはっきり手元で感じられて、グリップレベルをリアルに推し量れる。フロントの荷重も、接地面の状況も手に取るようにわかる。

不整路面では、両手でリムをしっかり抑えなくてはならず、サーキットでは腕力が求められる。しかし、シャシーに無理がかかるようなバンプが多くなければ、シャシーがかき乱されたり、ギシギシ揺れたりすることは少ない。

グリップレベルそのものは、標準タイヤを履いていてもかなり高く、ステアリングのレスポンスやシャシーの安定感は、公道上での常識的な速度域なら、普通に走って苦戦するようなものにはならない。そうであっても、よそよそしかったり、楽しくないというわけではない。

穏やかで、無理なく抑えられたピッチとロールは、通常のケイマンのハンドリングを特徴づけているが、それが現れるのはサーキットレベルのかなりのハイスピードに達した場合だ。しかしGT4 RSのステアリングとハンドリングは、完璧なまでに鋭く研ぎ澄まされ、どんな場合でも神秘的なほどの動きに魅了されそうだ。

このクルマは、手順を考えてドライビングすることはまずない。ほとんど衝動的であるように走らせることができ、同じことはエンジンにも言えるのだが、本気を出すほどに自分の神経がシャシーへと伸びていくような感覚に捉われる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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