BMW X1 詳細データテスト 高級感と広さは満足 走りと車格は不釣り合い ナビも改善の余地あり

公開 : 2023.02.04 20:25  更新 : 2023.03.05 02:19

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

もしBMWが、満足いくエンジンとギアボックスを開発できなかったとしたら、期待したくなるのはシャシーエンジニアの仕事ぶりだろう。X1は後輪駆動ベースではないが、そのことは優れたハンドリングを生み出す上で障壁になるとは限らない。

テスト車はMスポーツ仕様で、大径ホイールとローダウンサスペンションを装着している。ダンパーはアダプティブMスポーツ、タイヤ径は20インチだ。足は硬いが、大きいバンプなどを乗り越える際にもボディを大きく傾けることなく、フラットな姿勢を保つ。

このシャシーを振り回して遊ぶには、かなり本気の走りが求められる。普通に運転しているぶんには、たいていのドライバーが納得できる潤沢なグリップと、安心感あるスタビリティを発揮する。
このシャシーを振り回して遊ぶには、かなり本気の走りが求められる。普通に運転しているぶんには、たいていのドライバーが納得できる潤沢なグリップと、安心感あるスタビリティを発揮する。    MAX EDLESTON

コンチネンタル・エココンタクトの最新バージョンはそこそこのグリップを生むが、日常的な速度域ではステアリングの初期レスポンスにそれが感じられない。さらに切り込んで攻めていくと、みごとなターンインをする。ステアリングの重さはきわめてわずかながらも増し、現状をリアルタイムで伝えてくれる。

コーナー脱出でハードにパワーオンすると、アンダーステアを消すのに十分な駆動力が後輪へ送られるのが感じられる。同時に、コーナリング中にスロットルを抜くと、きれいなタックインを起こすことができる。

どれも満足できるが、ファミリー向けクロスオーバーで走りの楽しさやクルマとの一体感を感じるために、気合の入ったドライビングが必要だというのはおかしな話にも思える。もっと普通の速度域で、操縦系を介したインフォメーションをしっかり伝えてほしいところだ。

結局、本領を発揮したのは峠道風のテストコースだった。スタビリティコントロールは全体的におだやかな効きで、介入もでしゃばりな感じはしない。完全オフにはできないが、スポーティな走行モードにすると、遊べる側面を見せてくれる。ステアリングもまた、生き生きとしてくる。

とはいえ、全般的にみると、本格的に走りを楽しむレベルに持ち込むには、かなりハードなドライビングが必要とされる。そうしたチューニングは、スポーツカーならともかく、ファミリーカー想定のクロスオーバーSUVには似つかわしくない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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