フォルクスワーゲン・マルチバン 詳細データテスト サイズのわりにいい走り 広いが反響音が気になる

公開 : 2023.03.18 20:25  更新 : 2023.04.04 01:05

内装 ★★★★★★★★★★

テスト車は上位グレードで、さらにオプションが追加されている。しかし、どの機種も実用性や万能性は同レベルだ。支持者が、一度乗ったらほかには戻れない、という所以だ。

フロントには大きく幅広い、電動調整式シートが2脚。ドライビングポジションは比較的リラックスした、アップライトな姿勢で、ステアリングホイールのアングルは乗用車的だ。

車両価格は高いが、質感もそれに見合っている。それ以上に、シートアレンジの自由度の高さは特筆に値する。
車両価格は高いが、質感もそれに見合っている。それ以上に、シートアレンジの自由度の高さは特筆に値する。    LUC LACEY

このアーキテクチャーのハードウェアは、ほぼ前車軸とフロントシートの間に集中しており、じつにフレキシブルな構造となっている。そのため、背の低いセダンにも、全高2m近いバンにも使用できるのだ。

快適な環境を得るのはきわめて簡単だ。シートの周りには開けたスペースがあるが、これはギアセレクターがダッシュボードの高い位置に設置され、フロントウインドウが大面積で、Aピラー周辺の面積は大きいものの三角窓があるからだ。

ボディサイドはフラットで、ミラーもウインドウも大きいので、5×2m級のクルマとしては、狭い駐車場への車庫入れがもっとも楽な部類に入る。

マテリアルのフィッティングやフィニッシュはハイレベル。すらっとした表面処理、厚みがありソフトなカーペット、ダッシュボードのウッド調パネルもだ。とはいえ、オプション抜きで6万ポンド(約960万円)近い本体価格を考えると、広さだけでは元が取れないと思いたくなる。

前席周りの収納スペースは豊富だ。うっかり書類を置きっぱなしにしてしまうような頭上のシェルフはないが、各ドアにポケットはふたつあり、グローブボックスもふたつ。ダッシュボードには折りたたみ式ドリンクホルダーや、携帯電話を置くトレイも設置されている。

前後スライド式のコンソールは、小物入れとしても、2列目席のアームレストとしても使える。なお、フロントシートにはアームレストが装着されている。

キャビン後部は、望み通りにアレンジできる。カーペットの上には2300mmのレールが3組走る。テスト車は2・3列目合わせて5つのシートを備えるが、その数を減らすことも自在だ。1脚あたり15kgほどあるとはいえ、すべて脱着できる。コンソールも取り外しが可能で、さらに高さを引き上げてプレートを広げればテーブルとして使うこともできる。

シートは前後どちら向きにも設置でき、向きにかかわらずレールの端から端までスライドできる。テーブルを挟んで4人が向き合う会議室のようにも、オフィスがわりにも、シートをフルに使って大勢の子どもを送迎することも、アレンジ次第でいかようにもできるというわけだ。

このフレキシブルさにより、後席のレッグルームというのはどこが最小で最大だ、と言いにくくなっている。ゼロからフロントシートまでの3m近いスペースまで、自由自在に変えることができるからだ。

とはいえ、運転席を一般的なポジションにした場合は、2・3列目それぞれ715mmのレッグルームをとっても、さらに小さいながら積載スペースも確保できる、ということはお伝えできる。また、前席を最大限後ろへスライドしても、後席レッグルームは660mmとれる。

3列目の背後にはラゲッジシェルフがあり、それを設置して、干渉しない位置にシートを配置すると、荷室容量は469L。一般的な位置に配置した2列目の背後までをラゲッジルームにすると1844L、後席をすべて取り外すと3672Lに達する。ちなみに、ロングホイールベースの最大値は4053Lだ。

大事なのは、テールゲート開口部の幅が最小でも1200mm、高さが1160mmもあることだ。サイドドアの開口部も広く、内側には低いステップもあるので、乗降性は非常にいい。

あとふたつ、書いておくべきことがある。床下収納がないので、充電ケーブルは出しっぱなしになる。また、2列目は左右が決まっているので、取り違えると車体側に取り付けられているシートベルトが正しく装着できないのには注意が必要だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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