LEVC TX 詳細データテスト 最新ロンドンタクシー 乗り心地は極上 発電用エンジンは洗練不足

公開 : 2023.09.02 20:25  更新 : 2023.10.24 19:47

内装 ★★★★★★★★☆☆

ジーリー傘下に入ったことで、LEVCは使えるパーツの選択肢が飛躍的に広がった。運転席に乗り込むと、スッキリしたステアリングも、縦型ディスプレイも、ずんぐりしたシフトセレクターも、ボルボXC40あたりで見覚えのあるパーツだと気づかずにはいられない。素材と仕上げはもっと実用的で、色合いの異なるグレーの硬いプラスティックが多用されている。

ただし、上位グレードのダッシュボード上部やセンターコンソールの小物入れの蓋には柔らかい合皮系素材が使用され、シートは調整機能が良好なフル電動となる。8時間シフトをさわやかに過ごせるわけではないかもしれないが、ひどく疲れることもなさそうだ。すばらしい視認性とドライバー保護スクリーンは、運転席を比較的快適で、守られている感覚のある空間にしている。室内も明らかにきしみ音がなく、アルミモノコックのリジッドさが感じられる。

運転席周りには、ボルボとの共通点を感じる部品が多く見受けられる。同じジーリー傘下となったことで、パーツの選択肢に幅が生まれた。
運転席周りには、ボルボとの共通点を感じる部品が多く見受けられる。同じジーリー傘下となったことで、パーツの選択肢に幅が生まれた。    JOHN BRADSHAW

収納部もおおむね良好。センターの収納部を別にしても、ドアポケットは深く、頭上には書類を入れるスロットが備わる。しかし、前席の助手席側は、大きな荷物を積むスペースとなっている。そのため、ドライバーが楽に使えるわけではない。運転席の下にはロックできるボックスがあり、カップホルダーはトランスミッショントンネル反対側のアルミレールにボルト留め。ただし、シートレールに足首をぶつけて痛い思いをしたというテスターもいた。

しかし、良心的なタクシー運転手は、自分と同じように乗員の快適性も気にする。その点、このTXは失望するものではないが、注目に値するのは、前向き3列シートのほうが、後ろ向きで3人以上掛けることができるアップライトな折りたたみ式ベンチより落ち着くということだ。

違いがはっきりするのは、単に帰宅までの短時間を疲れずに乗れることだけを考えただけではない場合。街の向こう側までウェディングのために乗るとなれば、シート選びはもっと慎重になるはずだ。

それ以外も、TXに不足はほとんどない。ビスタ仕様のガラスルーフは、驚くほど垢抜けた雰囲気をもたらす。車載Wi-FiやUSBソケット、温度調整機構に加え、ドライバーと明瞭な会話ができるインターコムも備わる。全席シートベルト付きで、ISOFIXも2席に装備。レッグルームに問題はない。4人以下で乗るなら、レンジローバーのLWB仕様にも見劣りしない。プライベートジェットすら思わせる。

全6席を使うと、それよりはタイトになるが、ネックになりそうなのは運転席後方の、面と向かう2席くらいだ。グループでもっとも背が高いメンバーをそこに乗せなければ、全員が快適に過ごせるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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