ホンダe:Ny1 詳細データテスト 日常使いはイージー 走りの楽しさは不足気味 ライバルより高価

公開 : 2023.11.11 20:25

操舵/安定性 ★★★★★☆☆☆☆☆

e:Ny1に目立って運転しにくいところはないのだが、ハンドリングからは地味でも満足感を覚えるようなところがほぼ抜け落ちている。ホンダであれば、シビックにはそれがある。ライバルなら、出来のいいカローラとシャシーの一部を共用するトヨタbZ4Xにはそれが感じられた。

あるテスターが、こんな感想を書き留めていた。控えめなグリップと重いステアリングは、電動車が数字優先で、ドライビングの味みたいなものは二の次にしていた頃に戻ったようだ、と。

ホンダ車に期待するようなハンドリングの冴えはないが、全体的には運転するのに多くを要求するクルマではない。ただし、低速域でのトラクションは容易に失われる。
ホンダ車に期待するようなハンドリングの冴えはないが、全体的には運転するのに多くを要求するクルマではない。ただし、低速域でのトラクションは容易に失われる。    JACK HARRISON

小柄で軽めのクロスオーバーにレスポンスのいい電動パワートレインを積んだら、ハンドリングはこれよりいいものになって然るべきところだ。しかも、メーカーは傑作ハンドリングマシンを何台も世に送り出してきたホンダなのだ。ホンダEでさえ、ワインディングを飛ばすような場面ではもう少し冴えのある元気な身のこなしを見せてくれた。

ところが、e:Ny1は、進行方向を変えるのに、望ましいものよりも大きな負担をドライバーに強いる。わずかながらも否定できない、ぎこちなさがそこにはあるのだ。

露骨にやる気を削ぐようなところは一切ない。ボディコントロールは良好で、ステアリングもやや重いが正確さは期待どおり。トラクションには問題があるものの、運転しづらく疲れるようなクルマではない。とはいえ、光るところもない。

付け加えるなら、ステアリングの中立付近には、もうほんの少しだけダイレクトな反応がほしい。そうすれば、低速での取り回しが改善されるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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