ホンダe:Ny1 詳細データテスト 日常使いはイージー 走りの楽しさは不足気味 ライバルより高価

公開 : 2023.11.11 20:25

ホンダのEに続く欧州向けEV第2弾は、激戦区の小型クロスオーバー。素直で快適なファミリーカーですが、ホンダらしい走りの楽しさは不足が。ただしタイヤと操舵系の味付けを変え、充電性能を高めれば化けるかもしれません。

はじめに

既存メーカーの多くが、最初の真っ当なEVを市場投入してきたが、必ずしも販売台数や利益を見込んでのことではない。EVを投入し、ブランドを確立するべきときが来た、というのが主な理由だ。

その結果、心惹かれるクルマも生まれた。BMWなら時代を先取りしすぎたi3、ポルシェはタイカン、ロールス・ロイススペクターといったところだ。ホンダもその例外ではない。

テスト車:ホンダe:Ny1アドバンス
テスト車:ホンダe:Ny1アドバンス    JACK HARRISON

2020年には、コンセプトカーのようなコンパクトEVのEを発売。魅力的なインテリアと優れた小回り性を備え、しかもじつに愛らしい。実際には、航続距離の短さや高い価格のせいで、売れ行きはよろしくないが、そこは重要ではない。ホンダは興味深いEVをつくると、しばし話題になれば御の字だった。

今回のテスト車は、ホンダのBEVを模索するストーリーの新章といったところだ。おそらく、欧州やアジアの競合メーカーが矢継ぎ早に新型EVを投入する中で、ホンダが放つ二の矢はこのe:Ny1のみだというのは驚くべきことだろう。

水素燃料電池だけでなくBEVも先行き不透明だったなかで、ホンダが出遅れたのは間違いない。さらには、ホンダが信頼性に関して、とりわけ北米でゆるぎない評判を得ていた内燃エンジンから、電動化への移行に本腰を入れていなかったのも、無理からぬことだろう。

とはいえ、いまやこのe:Ny1というシャレた名前のEVが存在し、コンパクトSUVであることから、間違いなくE以上の商業的な成功は見込まれている。ライバルは少なくないが、現時点においてホンダがEVメーカーとしてどのように認知されるかをおおよそ決めるクルマになるはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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