MG 4 EV:優秀な電動ファミリーカー アルファ・ロメオ Jr.エレットリカ:まだ宿題アリ ベスト・ファンEV(1)

公開 : 2025.03.12 19:05

4位:アルファ・ロメオジュニア・エレットリカ まだ宿題はある

アルファ・ロメオの初EV、ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェのスペックを見ると、自ずと期待値が高くなる。最高出力は281psあり、全長は4173mmでコンパクト。パワーを最大限に路面へ展開すべく、機械式のリミテッドスリップ・デフも備える。

フロントのブレーキディスクの直径は380mmと、不満ない大きさ。挟むのは、4ポッドキャリパーだ。車内にはサベルト社製のバケットシートが組まれ、スポーティなだけでなく快適。ハードウェア的には、しっかり「アルファ」している。

ブラックのアルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ
ブラックのアルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェと、オレンジのMG 4 EV エクステンデッドレンジ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

それでも4位。アルファ・ロメオには、まだ宿題があるように思えた。

ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェは間違いなく速い。試乗した日の路面は軽く濡れていたが、タイトコーナーからの立ち上がりは、トラクションを活かし鋭く爽快。前輪駆動でもアンダーステアは抑えられ、トラクション・コントロールの出番も少ない。

しかし、動的な特徴にはまとまりが弱い。姿勢制御は路面の影響を受けがちで、凹凸を通過すると落ち着きへの影響が小さくない。ステアリングの反応は、ミニ・クーパー SEほど軽快ではなく、アルピーヌA290ほど洗練されてもいないようだ。

楽しいことは間違いなし 制限された動的能力

現在のアルファ・ロメオは、ステランティス・グループの技術や部品を共有することから逃れられない。プラスティックが露出したダッシュボードやドアパネルは、ジープアベンジャーと共用されている。腕を真っすぐ伸ばした、運転姿勢も。

他のライバルは、トラクションとスタビリティ・コントロールの制御で、運転体験を一層深いものにしている。だがジュニア・エレットリカは、プラットフォームと同じく、ステランティス由来。ドライバーが任意に制御を切り替えることはできない。

アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェ(欧州仕様)
アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェ(欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

リミテッドスリップ・デフは、効果的にボディを牽引する能力を持っている。シャシーも、アクセルペダルの加減で回頭性を増していける。しかし、ドライバーが少し高みを目指した途端、コンピューターの抑制が入ってしまう。

ハードウェアの実力を知るほど、制限された動的能力がもどかしくなってくる。ジュニア・エレットリカの運転が楽しいことは間違いない。それでも夢中になる一歩手前で、引き戻されてしまう。少しお高めの英国価格も、評価にプラスとはいえないだろう。

MG 4 EV エクステンデッドレンジ(英国仕様)のスペック

英国価格:3万6495ポンド(約712万円)
全長:4287mm
全幅:1836mm
全高:1504mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.1秒
航続距離:519km
電費:5.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1748kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:74.4kWh
急速充電能力:−
最高出力:245ps
最大トルク:35.6kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

MG 4 EV エクステンデッドレンジ(英国仕様)
MG 4 EV エクステンデッドレンジ(英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・ヴェローチェ(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万2295ポンド(約825万円)
全長:4173mm
全幅:1781mm
全高:1535mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:6.0秒
航続距離:321km
電費:6.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1590kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:50.8kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:281ps
最大トルク:35.0kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

この続きは、ベスト・ファンEV(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    ヴィッキー・パロット

    Vicky Parrott

    2006年より自動車ジャーナリストとして活躍している。AUTOCARを含む複数の自動車専門誌で編集者を歴任した後、フリーランスとして活動を開始し、多くの媒体で執筆を続けている。得意分野はEV、ハイブリッド、お菓子。2020年からは欧州カー・オブ・ザ・イヤーの審査員も務める。1992年式のメルセデス・ベンツ300SL 24Vの誇り高きオーナーでもある。これまで運転した中で最高のクルマは、2008年のフォード・フィエスタSTとアルピーヌA110。どちらも別格だ。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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