ポルシェ・マカン・エレクトリック 詳細データテスト クラス最速レベル ブレーキとシャシーに疑問符

公開 : 2025.03.15 20:25

内装 ★★★★★★★★☆☆

プラットフォームを共用すると、違うクルマでもインテリアの見た目やフィールがガッカリするほど似通ってしまう。フォルクスワーゲンのMEBファミリーやステランティスの各モデルを見ればわかるだろう。そこで、ポルシェアウディは明らかに、そこを避けようとしている。

鵜の目鷹の目で観察すれば、コラムレバーをはじめ、ペダルとその配置、ドライビングポジションなどに共通性を見出すだろうが、せいぜいその程度だ。

エルゴノミクスや機能面はいつもながら優秀だが、質感や組み付けに難のある部分も少なくない。そして、標準装備して欲しいものまでオプションなのもポルシェらしい。
エルゴノミクスや機能面はいつもながら優秀だが、質感や組み付けに難のある部分も少なくない。そして、標準装備して欲しいものまでオプションなのもポルシェらしい。    MAX EDLESTON

ディスプレイの総面積はQ6と同じくらいあるが、ドライバーの前とセンターへのディスプレイ配置はまったく同じではない。センターのインフォテインメントディスプレイはダッシュボードの上ではなくパネル面に埋め込まれている。その下には、実体スイッチを設置したパネルがある。温度と風量を調整するローレット加工のロッカースイッチはフィールがよい。しかし、シートヒーターなどのボタンを押すと、グロスブラックのパネル全体が動き、指紋も付く。

全体的な質感は、いいところと悪いところがごちゃ混ぜだ。オプションも含めてレザーで覆われた部分とウインドウスイッチ、シフトセレクターやステアリングホイール周辺はまずまずハイクオリティ。

ところが、センターコンソールのプラスティックパーツには、とても10万ポンド(約1920万円)級の価格に見合うとは思えないものもちらほら。そして、助手席前の広範囲を占めるグロスブラックのプラスティックは味気ない。オプションのディスプレイが入る場所だとしても、これではあんまりだ。

ポルシェの常で、パーソナライズメニューはふんだんに用意されている。より明るい色合いやウッドトリム、つまらないプラスティックを覆い隠すレザーの追加、異なるタイプのシートやステアリングホイールなど、予算が許すなら選び放題だ。

もうひとつポルシェらしいのが、エルゴノミクスと使い勝手を入念に仕上げていること。当然ながらもっとボタンはあるほうがいいのだが、マカンはうまくバランスをとっている。文句なく機能してくれる最新のデジタルデバイスと、ADASの切り替えなど頻繁に使う機能に割り当てた実体コントロールを兼ね備えている。ドライビングポジションもすばらしい。ステリングコラムと座面高の調整幅も広い。

室内のスペースは、Q6にやや劣る。レッグルームはジェネシスGV60並みで、ポールスター3にはやや届かない。とはいえ、後席乗員からも不満は出ないだろう。着座姿勢も快適だ。ここでもオプションは豊富だが、この価格のクルマでゾーン分割エアコンやシートヒーターも追い金が必要なのはいかがなものか。

荷室のスペースはクラス平均といったところだが、形状はスクエアで、フックやレバーも揃っている。フロントには充電ケーブルと小さなバッグくらいは収まるフランクがあり、キーのボタンで開くことができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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