ポルシェ・マカン・エレクトリック 詳細データテスト クラス最速レベル ブレーキとシャシーに疑問符

公開 : 2025.03.15 20:25

走り ★★★★★★★★☆☆

ポルシェは昔から、少ない力で奥のことを得てきたが、それはBEVのマカン・ターボにもいえることだ。通常時で581ps、ローンチコントロールを使えば639psに達するが、ヒョンデアイオニック5Nはオーバーブースト使用時で650ps、メルセデスAMG EQE53SUVなら通常でも626psを発生する。

それでも、英国で最速の電動SUVを手に入れたいなら、そして左ハンドルのみのテスラモデルXプレイドを避けるなら、選ぶべきはポルシェとなる。

これよりハイパワーの電動SUVは存在するが、加速タイムは最高レベル。残念なのは、ポルシェの美点であるブレーキに、自信を持って操作できるフィールがないことだ。
これよりハイパワーの電動SUVは存在するが、加速タイムは最高レベル。残念なのは、ポルシェの美点であるブレーキに、自信を持って操作できるフィールがないことだ。    MAX EDLESTON

寒い中でのテストだったが、ゼロスタートは3秒ジャストで97km/hに達した。これは、アイオニック5Nより0.5秒速い。それはアウトバーンの速度域でも衰えることなく、260km/hでリミッターに当たるまでリードを保つ。おかしいのは、数字が示すほどとてつもない速さに感じられないことだが、それは加速の勢いが足りないのではなく、文句ないコントロールのおかげだ。

バッテリー残量が10%を切ると、パフォーマンスが大幅に低下するのも驚きだ。残り6%でのフル加速では、0-97km/hが3秒も遅くなる。そこで4%になり、すると亀のマークが表示され、さらにコンマ2秒落ちる。130km/hに達するにも苦戦するほどだ。

ポルシェは、回生ブレーキについても揺るがぬ信念がある。ワンペダル運転には信用を置いていない。それに同意するなら、マカンのドライビングはじつに直観的だとわかるはずだ。

というのも、基本的にスロットルペダルから足を離すとフリーに転がり、高回生モードでもかなりマイルド。しかしながら、ブレーキのペダルフィールにはガッカリする。タイカンよりはマシだが、安心感のある硬さはなく、よくできたEVほど予測が効かない。もちろん、ワンペダル運転をしたいドライバーは蚊帳の外だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事