E39型BMW 5シリーズ:現代の厳しい評価に耐える

E39型BMW 528iは、シンプルだった時代のミュンヘン・ブランドを象徴する1台だろう。滑らかな直列6気筒エンジンに、ドライバー中心のコクピット。正面には2枚のアナログメーターが並び、究極のドライビングマシンという言葉が、ピタリとハマる。

その頃BMWを実質的に率いていたのは、技術者のヴォルフガング・ライツレ氏。今でも、この世代のモデルは高く評価されている。

BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)
BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

低く無駄のないボディは、新しい方向性を探り出す必要性を提示した、クリス・バングル氏以前のスタイル。明確なアイデンティティと威厳が漂う。E39型の5シリーズは1995年に発売されたが、ボディサイズは現在の3シリーズと殆ど変わらない。

「この5シリーズは、現代の目や耳、手足による厳しい評価に耐えますね。車内は充分に広く、レイアウトは人間工学に準じています。運転姿勢は完璧です」。ジェームス・ディスデイルが称える。

スムーズな2.8L直6エンジンは、2025年の交通に紛れても余裕のパワーを生み出す。仕事自体は流暢な5速ATは、変速タイミングが遅め。時代を感じさせる1つといえる。

ステアリングは自然なレシオと重み付け。後輪駆動らしいバランスを、普段使いの速度域で感じられる。洗練性は、現代の多くのモデルを凌駕している。

フォード・モンデオ:非常に高い一般道での充足感

フォード・モンデオ 1.8 LXは、当時のビジネスマンを納得させたサルーン。英国で売れる新車の7割近くが、社用車として企業に買われていた頃で、フォードは全盛期を迎えていた。それを牽引したのは、技術者のリチャード・パリー・ジョーンズ氏だった。

1993年にモンデオが発売されると、AUTOCARでは14ページもの特集を組んで徹底的な試乗テストを実施。そこでの絶賛は、フォードの株価を押し上げたとか。数か月後には、モンデオ 1.8 LXで1万9000kmを超えるグランドツアーも敢行している。

フォード・モンデオ(初代/1993〜2000年/英国仕様)
フォード・モンデオ(初代/1993〜2000年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

バプラートは、運転姿勢の素晴らしさと直感的なマナーを評価する。「カタチや素材、低いウエストライン、広いガラスエリアなどは、古さを感じさせます。しかし一般道での充足感は非常に高いですね」

「クラシックカーとして、評価される兆候は感じにくいかもしれません。この先代の、フォード・シエラも」。プライアーは、エイジングに少々不安を感じているようだ。

この続きは、輝かしい1990年代のクルマ(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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