デザイナーが語るBMWとアルピナの未来の姿 「近々包括的な発表」

公開 : 2025.10.08 18:05

デザイナーとしての仕事とは?

究極の目標は、言うまでもなくアイコンとなるクルマを定期的に生み出すことであり、BMWはまさにそれを成し遂げてきた。ミッソーニ氏は、その秘訣を突き止めたと確信しているようだ。BMWが自社のデザイン価値観をこれほど効果的に再定義できたことに、筆者自身も安堵の念を覚えている。

「人々がクラシックとして記憶するクルマは、デザインとテクノロジーの二大要素が見事に調和した時に生まれることが多い。漸進的なデザインの集大成として真のクラシックカーが生まれることは稀です」

マクシミリアン・ミッソーニ氏
マクシミリアン・ミッソーニ氏

「アイコンになるには確かな根拠が必要です。デザイナーとしてのわたし達の仕事は『先見の明を持つ者』となり、新たな形式や次元を提案し、その空白を埋めるテクノロジーを探求することです。それを見つけられれば、アイコンを生み出すための条件が整います」

今後量産体制に入るノイエ・クラッセ車(少なくともその一部)はBMWの「クラシック」となるだけの強い根拠があると、ミッソーニ氏は言う。

「ノイエ・クラッセ車はブランドの本質に大きく焦点を当てています。同時に、まったく新しいパワートレインを備えています。プロポーションは電動化の影響を強く受けていますが、デザインはBMWの本質に立ち返っています」

「おそらく、それがあなたに安堵感を与えたのでしょう」

BMWにおける自身の役割を語るミッソーニ氏は、自動車デザイナーの仕事が創造性だけでなく哲学にも深く根ざしたものであることを明確に示している。

「かつてのクルマは、ある種シンプルでした。欲しいものがすべて揃っていたわけではありませんが、必要なものは簡単に見つけられました。それがユーザーに充足感を与えていたのです。ここしばらくは過剰な複雑化が進んでいます。ソフトウェアによって車載機能を調整できるようになったため、そうする方が賢明かもしれません。一度操作方法を覚えれば、ユーザーエクスペリエンスが向上する可能性が高いからです」

「わたしが非常に興味深いと思うのは、人工知能(AI)が内部システムの深い複雑さと、わたし達の求めるミニマルなインターフェースの間のレイヤーになり始めていることです。このAIレイヤーは、ユーザーの行動を予測でき、何が必要かを理解します。ユーザーがシステムを理解する必要はなく、システムはユーザーを助けてくれます。これは、わたし達が求めるシンプルさと、現代的な機能の深みを両立させる素晴らしい方法です」

ミニマリズムと洗練

建築家の両親を持つミッソーニ氏は、モダンデザイン思考に満ちた家庭で育った。はじめはボートのデザインに興味を持ったが、海に縁のない十代の少年には少し変わった趣味だったと彼自身も認めている。ボート雑誌で、1989年のフェラーリのコンセプトカー『ミトス』が掲載されたピニンファリーナの広告を目にした時、動くモダンデザインを創造する仕事に興味を持った。

今でもボートは好きだが、ボートよりクルマの方が多くの人々の生活に身近であり、それがクルマの魅力だという。ミッソーニ氏はオーストリアのリンツの大学で学士号を取得後、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで自動車デザインを専攻。卒業後はヴォルフスブルクのフォルクスワーゲンで働き、2015年に発表された『XL1』のコンセプトの設計を主導した。

マクシミリアン・ミッソーニ氏が設計に携わったフォルクスワーゲンXL1
マクシミリアン・ミッソーニ氏が設計に携わったフォルクスワーゲンXL1

このXL1と、その後に手掛けたボルボポールスターのデザインはスカンジナビアンデザインの本質を巧みに捉えたとして、いずれも高く評価され、ミッソーニ氏は現代車のミニマリズムと洗練性を熟知したデザイナーとしての名声を確立した。ミニマリズムと洗練、これらは彼の作品を形容する際に最もよく使われる言葉である。

しかし、2018年にポールスターに移ってから、ミッソーニ氏は理想的なデザインの目標として「純粋さ」を好むようになった。

「わたしは『純粋さ』を好みます。『ミニマリズム』という言葉は、何かが省かれたり削られたりしている印象を与えがちですが、実際にはそうではありません」

「未来のデザインについて、わたし達が伝えたいのは『必要な時に必要なものを提供でき、何も不足しない』という概念です。これはミニマリズムではありますが、言葉の真の意味ではそうではありません」

自動車デザイナーの世界へようこそ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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