【現役デザイナーの眼】新世代魂動デザイン、ミゼットX、FRコペンなど、ジャパンモビリティショー注目の4台 #JMS2025

公開 : 2025.11.01 07:05

ダイハツコペン(K-OPEN):明快なFRプロポーション

さらにサプライズだった『コペン(K-OPEN)』は明快なFRのプロポーションで、本当にこのまま出してほしい1台です。前回のJMSではコンセプトの『ビジョン・コペン』を出していましたが、今回の方がより明快なデザインで魅力を感じました。良いプロポーションやしっかりした塊感に加え、コペンのオリジナリティである可愛らしさもある魅力的なスポーツカーです。

今回一連のコンセプトカーを見て、造形の良さもさることながらCMFの上手さ、コンセプトの統一感といった総合的なデザインの力を感じました。

ダイハツからサプライズデビューしたコンセプト、『コペン(K-OPEN)』。
ダイハツからサプライズデビューしたコンセプト、『コペン(K-OPEN)』。    上野和秀

様々な事情があることは承知のうえで、個人的には市販車にもこのテイストを反映させて欲しいと強く思います。

キアPV5:機能性と見た目を両立させたデザイン

この『キアPV5』は市販車ですが、まるでコンセプトカーのような明快かつ完成度の高いデザインで、個人的には今回のショーの中で一番良いと感じたクルマです。というのも、機能性と見た目を両立させた、優れたプロダクトデザインに思えたからなんですね。

まず、注目は『EVならではのデザイン』を表現しているということです。現在、多くのEVが発表されていますが、そのほとんどはエンジン車の名残を感じさせるシルエットになっています。

明快かつ完成度の高いデザインで、筆者が今回のショーで一番良いと感じた『キアPV5』。
明快かつ完成度の高いデザインで、筆者が今回のショーで一番良いと感じた『キアPV5』。    山田真人

しかし、このPV5はノーズがまるでキャブオーバー車のように短く、その分室内空間に反映されており、次世代ミニバンとして非常に説得力のあるものです。

また、サイドシルエットではウインドウが縦に長いので、通常のカーデザインが重視する『ロアボディの厚み』とは全く逆のアプローチもポイントです。座ると腰の位置まである大きなガラス面はユーザーの声を反映したもののようですが、一般的にこのようなデザインは頭でっかちなシルエットになり難しいんですね。

しかし、PV5ではボンネットを黒く塗り分けてキャビンとの一体感を演出し、さらに高い位置に特徴的なDRLを配置することで、プロポーションのバランスを巧みに整えており、ここが『デザインの力』だと感じます。

全体のスタンスも見事で、ボディの前後コーナー部はボディプランの流れから折れてアプローチを入れており、この処理で箱のシルエットながら、どのビューから見ても踏ん張り感のあるスタンスを実現しています。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 撮影

    山田真人

    Makoto Yamada

    1973年生まれ。アウトドア雑誌編集部からフリーランスカメラマンに転身。小学5年生の時に鉄道写真を撮りに初めての一人旅に出たのがきっかけで、今だにさすらいの旅をするように。無人島から海外リゾート、子どもからメガヨットと幅広い撮影ジャンルを持つ。好きな被写体は動くものと夕陽。
  • 撮影

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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