「大排気量V8」が再注目 メルセデス・ベンツ、ロータス、ステランティスなど続々復活 要因はEV嫌いと米国規制緩和

公開 : 2026.07.01 07:25

ステランティスのV8再導入は合理的

「ヘミV8エンジンの販売を加速させ続けることは、販売台数にとっても、製品構成にとっても、そして何よりも利益にとって非常に良いことです」と、フィローザ氏は同社の第1四半期決算説明会で語った。ステランティスは、V8エンジンを中核に据え、高性能のSRTシリーズにより米国市場でのマッスルカー販売を強化したい考えだ。この決定は、当然の流れだった。

「ヘミV8エンジンの復活は大きな注目を集め、ハリケーン・ツインターボ直列6気筒エンジンの採用を強いられたことに不満を抱いていたお客様やディーラーの声に、ステランティスが耳を傾けているという明確なメッセージとなりました」と、調査会社バーンスタインのアナリストであるスティーブン・ライトマン氏は述べている。

ヘミ・ランブルビー
ヘミ・ランブルビー

V8エンジンの復活は、自動車メーカーに課されていた排出ガス規制を撤廃し、CO2排出目標未達成に対する罰則を廃止するというドナルド・トランプ米大統領の決定に端を発している。

「ステランティスは、ヘミV8のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を相殺するために温室効果ガスクレジット(排出権)を購入する必要がなくなりました。ヘミの復活は採算が合うのです」とライトマン氏は言う。

イラン情勢による燃料価格の高騰が続く中、ハリケーンエンジン搭載モデルより40%高く、プラグインハイブリッド車(PHEV)の3倍にも上る燃料費に、購入者が躊躇するのではないかという指摘も挙がったが、フィローザ氏はこれを退け、「米国では、欧州に比べて原油価格の圧力が低い」と述べた。

電動化から方針転換の欧州ブランド

長い間、高級車に限定されていた欧州のV8エンジンは、CO2排出規制への対応として電動化モデルに取って代わられ、衰退の一途をたどっていた。しかし、高級車ブランドは世界中に顧客を抱えており、高級車市場における顧客の電動化への消極的な姿勢と、米国におけるV8エンジンの規制緩和が相まって、V8復活の決断が後押しされた形だ。

例えば、メルセデス・ベンツの高性能車部門であるAMGは、680psという高出力を誇りながらもC 63の4気筒PHEVへの反響が今ひとつだったことを受け、V8エンジンを復活させた。より滑らかで排出ガスの少ない新型V8エンジンが、GLEGLSを含む一連の新モデルに搭載される予定だ。他の欧州高級車ブランドと同様、メルセデス・ベンツも中国でのシェア低下に伴って米国市場への依存度を高めており、そのためには上位モデルにV8エンジンをラインナップする必要がある。

メルセデス・ベンツSクラス
メルセデス・ベンツSクラス

BMWの元CEOであるオリバー・ツィプセ氏は、今年の北京モーターショーでV8モデル群を強調し、中国の競合他社に見られる「モノカルチャー」に対するBMWの強みとして打ち出していた。

「あらゆるパワートレインをご覧いただけます。V8エンジン、ノイエ・クラッセ、EV、小型車、新型7シリーズ、そして水素への取り組み。プレミアムブランドが持つ全容をご覧いただけると思います」とツィプセ氏は語っていた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニック・ギブス

    Nick Gibbs

    英国編集部ビジネス担当記者
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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