絶滅、定着? 2ドアセダンからSUVまで クルマのボディ形状、統廃合の歩み

公開 : 2022.01.30 05:45

消えるボディタイプ そのワケは?

かつて2ドアセダンは珍しい存在ではなかった。

フォルクスワーゲンビートルやBMCミニなど、4ドアを用意しない実用車も多かった。

ボディ・ラインナップを増やすことで、時代とともに歩む道を選んだのがミニ。
ボディ・ラインナップを増やすことで、時代とともに歩む道を選んだのがミニ。    宮澤佳久/前田惠介/上野和秀

4ドアより安く作れるためで、フリートユースでも重宝された。

一方で4ドアより軽く剛性が高いことからスポーツモデルの素材にもなった。

昔のツーリングカーレースで活躍したBMWの02シリーズやロータス・コーティナは代表格だし、WRCでチャンピオンマシンになったフォード・エスコートRSやフィアットアバルト131ラリーも2ドアセダンだ。

それが4ドアに一本化されていったのは、安さよりも使いやすさを重視するユーザーが増えたからだろう。

ビートルやミニはハッチゲートを加えた3ドアになったが、それだけでは市場の要求に応えることは難しい。

ゆえにザ・ビートルは生産中止に追い込まれ、ミニはボディタイプを一気に増やすことで3ドアを存続させている。

4ドア化の波 クーペの世界にも?

2ドアが少数派になっているのはセダンだけではない。

最近はクーペにも4ドアや5ドアが増えてきた。きっかけになったのは、メルセデス・ベンツCLSではないかと思っている。

SUVの時代が始まると、クーペには従来とは異なる要素が求められるようになった。写真は2代目メルセデス・ベンツCLSクラス。
SUVの時代が始まると、クーペには従来とは異なる要素が求められるようになった。写真は2代目メルセデス・ベンツCLSクラス。    AUTOCAR

CLSが発売された2005年は、すでにメルセデスMクラス(現在はGLE)、BMW X5などのSUVが現れており、ユーザーはこれをセダン代わりに乗り回しはじめていた。

実用車の主役がセダンからSUVに移行した結果、4/5ドアクーペが出現したと理解している。

昔のユーザーはカッコよさのためには実用性・快適性を犠牲にする人も多かったが、贅沢になった現代人にそのロジックは通用しにくい。

そんな中、両方の願いを叶えるボディタイプとして考えられたのが、4ドアや5ドアのクーペと言える。

好きだけど…安全・環境という現実

ただし4ドアクーペに近いボディは昔からあった。4ドアハードトップだ。

ハードトップはそもそもソフトトップの対語で、オープンカーに装着する固い屋根のことだったが、その後ルーフをボディと一体化したタイプもこう呼ばれるようになった。

現行型メルセデス・ベンツEクラス・クーペ。この開放感はセンターピラーがないクルマだけの特権。
現行型メルセデス・ベンツEクラス・クーペ。この開放感はセンターピラーがないクルマだけの特権。    前田惠介

クーペとの違いはセンターピラーレスであること。

当初はオープンカー同様2ドアのみだったが、第2次世界大戦後にアメリカで4ドアハードトップが登場し、1970年代には日本車にも波及。前述したカローラに設定されたこともあった。

ところがそのハードトップ、最近は言葉自体をあまり聞かない。

側面衝突対応が難しいために、多くが姿を消してしまったようだ。現在の新車ではメルセデスEクラス・クーペがセンターピラーレスであるが、ハードトップとは名乗っていない。

オープンカーの屋根を固い材質にしたリトラクタブルハードトップも、かつては多くのブランドが揃えていたが、現在残っているのはマツダロードスターRF(リトラクタブル・ファストバック)ぐらいだ。

ボディが重くなるので環境性能や燃費性能で不利になることが影響していると思われる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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