EV補助金打ち切りは「最悪のタイミング」 突然の英政府発表に反響 販売への懸念も

公開 : 2022.06.15 18:05

英国政府は6月14日、EVに対する購入補助金の即時廃止を発表しました。メーカーや業界団体からは批判の声も上がっています。

突然の補助金打ち切り 業界の反応は

英国政府は14日、EVやPHEVに対するプラグインカー補助金(PiCG)を廃止すると発表した。PiCGは導入から10年以上が経過する補助金制度で、これまで50万台の電動モデル購入を支援してきた。

廃止直前の支給額は1500ポンド(約25万円)だった。対象となる車種の価格上限は3万2000ポンド(約520万円)で、国内で販売される24台に適用されていた。

英国政府は11年続いた電動モデル購入補助金制度を予告なしに廃止した。
英国政府は11年続いた電動モデル購入補助金制度を予告なしに廃止した。

ここでは、PiCGに関する基本的な情報や、今回の廃止に対する自動車産業からの反応をまとめる。

PiCGとは何か? なぜ廃止されたのか?

英国政府は、PiCG廃止の理由として、EVの販売台数が急速に伸びていることを挙げている。実際、2011年はわずか1000台だった国内のEV販売台数が、2022年に入ってからすでに10万台近くに達している。

また、支給額や対象車種はこれまで何度も縮小されてきたが、近年のEV販売に「ほとんど影響を与えなかった」との見解を示している。最も注目すべきは、ここ数年で手頃な価格のEVが劇的に増加し、補助金の影響が小さくなっていることだという。

政府の見解では、PiCG廃止によるEV販売への影響は「ない」という。
政府の見解では、PiCG廃止によるEV販売への影響は「ない」という。

政府はPiCGを廃止する代わりに、他の分野でのEV普及を促進し、2030年までに国内のEV充電インフラを10倍に拡張する計画に重点を移している。

補助金制度の復活はあるか?

2011年1月1日、すべてのプラグインカーの購入に最大5000ポンド(約80万円)の割引が導入されたときから、補助金は形を変えて存在してきた。何度か減額と対象範囲の縮小が行われ、最近では1500ポンドが支給されていた。

政府は今後、自家用車以外の分野でのEV普及を促進するため、電動バイクやスクーター、タクシー、小型商用車への助成を強化する方針だ。

2030年にガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止するという計画は変わっておらず、その目標に沿ってEVの普及を加速させることが補助金の目的だった。そのため、EVに対する財政的な優遇措置が再び導入される可能性は極めて低い。

対象車種は24台も 今後の政府方針は?

PiCGの廃止後も、英国内でまだ助成を受けられるEVはある。政府は今後、車椅子対応の福祉車両とタクシーにのみ補助金を支給することにしているのだ。

対象となる車椅子仕様車は、乗用車を改造したもので、走行時にCO2を排出せず、エンジン停止状態で113km走行でき、価格が3万5000ポンド(約570万円)以下であることが条件。これをクリアすると、最大2500ポンド(約40万円)の補助金(年間1000ポンドずつ交付)を受ける資格を得られる。

タクシーや福祉車両への補助金は引き続き設定される。
タクシーや福祉車両への補助金は引き続き設定される。

タクシーについては、日産e-NV200ベースのダイナモタクシーとLEVC TXレンジエクステンダーキャブ(いわゆるロンドンタクシー)に限定され、対象台数はかなり少ない。対象のタクシーには、最大7500ポンド(約120万円)を上限とする、購入価格の20%の補助金が適用される。

PiCGの対象となっていたモデル

英国政府によると、PiCGの対象車種、つまり国内で販売される3万2000ポンド以下の乗用EVは24台あったという。

具体的な車種としては、ホンダe、日産リーフマツダMX-30フィアット500e、フォルクスワーゲンID.3ミニ・エレクトリック、プジョーe-208、ルノー・ゾエ、スマートEQフォーツー、MG 5 SW EV、MG ZS EVなどが挙げられる。

今のところ、補助金が打ち切られたことによる実質的な価格上昇を受け、販売価格を調整するというメーカー側の兆候は見られない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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