クラシック・ミニを電動化 エレクトロジェニック・ミニへ試乗 楽しい個性はキープ 後編

公開 : 2022.07.05 08:26

英国の技術企業が、テスラの駆動用バッテリーでBMCミニをBEV化。想像以上にミニらしい走りを、英国編集部は評価します。

インテリアもサスペンションもオリジナル

エレクトロジェニック・ミニは、内燃エンジンが載っていないという1点を除いて、オリジナルの雰囲気を見事に保っている。インテリアも基本的には手が加えられておらず、サスペンションも円錐形のラバーコーンのままだ。

BEV化は重量増を招きがちだが、この例では数kgのプラスに留められている。寒い時にエンジンの始動で用いるチョークケーブルも、機能していないが残っている。ダッシュボードの水温計もそのままだが、コスト次第では別の機能を与えることもできるだろう。

エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)
エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)

システムオンは、従来的なキーを回して。駆動用バッテリーのインジケーターが灯り、出発可能な状態にあることを教えてくれる。

ギアを入れてクラッチペダルを放しても、エレクトロジェニック・ミニはピクリとも動かない。アクセルペダルを踏んで、やっと進み出す。

ギアは繋ぎっぱなしでも構わないが、クラッチペダルを踏んで半クラッチにした方が、滑らかにスタートできる。発進前に、筆者は担当者から2速が良いと聞いていた。静止する際も、クラッチを切り離す必要はない。

駆動用モーターのコントローラーは一般的な量産モデルほど洗練されておらず、急発進になりがちだった。エレクトロモッド社は、より滑らかな制御が可能なモジュールを用意しているが、1500ポンド(約25万円)のオプションだという。

走行中に、3速へシフトアップもできる。意外にも走りの印象が良くなり、ミニを運転しているという気分を濃くしてくれる。

オリジナルのミニらしく活発に走る

シフトダウンには注意が必要。どのくらい駆動用モーターが回転しているのか、音だけでは把握しにくいためだ。クラッチペダルを緩めるポイントも。

といっても、駆動用モーターからは明確な回転ノイズが響いてくる。面白いことに、それがオリジナルのミニのように感じさせる特徴にもなっている。独特のサスペンションと組み合さって、本当にミニらしく走る。

エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)
エレクトロジェニック・ミニ・クーパー(英国仕様)

タイヤは、ヨコハマ・クラシック。27歳のミニのシャシーを限界まで攻めるようなことはなかったものの、ビスター・ヘリテージ社のテストコースに敷かれたアスファルトを、粘り強く掴んでいた。

パワーアシストの付かないステアリングホイールは重い。しかしコミュニケーションが取りやすく、バンプを超えてもキックバックなどは皆無。小さなミニを、勢いよくコーナーめがけて飛び込ませていける。

洗練されたフィーリングとはいえない。だが、運転を楽しくしている要素の1つだ。

最高出力51psでも、数字以上に速く活発に感じる。あと20psくらいパワーがあっても歓迎できるが、不満と感じるほどではない。

121psを発揮するとしたら、オーバーパワーかもしれない。その場合は、摩擦ブレーキのアップグレードも必要になるはず。エレクトロジェニック社は、ノーマルのまま手を加えていないためだ。

ブレーキにはサーボアシストは備わらず、制動力を強めたい場合は、ブレーキペダルをそのぶん強く踏む必要がある。51psなら、充分に効くと感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

クラシック・ミニを電動化 エレクトロジェニック・ミニへ試乗 楽しい個性はキープの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事