ベントレー・フライングスパー 詳細データテスト 快適さと走りの好バランス 電池容量と静粛性に難が

公開 : 2022.08.27 20:25  更新 : 2022.09.06 05:17

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

2020年にデビューした現行フライングスパーは、エンジン単体モデルであっても技術面の飛躍的進歩を体現するモデルだ。

プラットフォームは同じフォルクスワーゲングループのポルシェと共同開発し、車高の低いフォルムとウェイトの削減を実現した。エンジン搭載位置は後退し、先代モデルより前後重量配分は均等に近づいた。より高性能な駆動系やサスペンション、ステアリングの新規軸も導入されている。

マリナーには、ヘッドアップディスプレイや暗視カメラ、ACCやアクティブセーフティ系のセーフガード・プラスなどを含むツーリング・スペシフィケーションが標準装備される。
マリナーには、ヘッドアップディスプレイや暗視カメラ、ACCやアクティブセーフティ系のセーフガード・プラスなどを含むツーリング・スペシフィケーションが標準装備される。    WILL WILLIAMS

ハイブリッドモデルの妥協が少ないパッケージングも、大いに賞賛できるものだ。エンジンはW12やV8に代わり、2.9LツインターボのV6ガソリンを搭載し、136psの永久磁石同期モーターと8速DCTを組み合わせる。

荷室フロアの下には、18kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。そのため、キャビンのパッケージングにハイブリッド化の悪影響はない。

PHEV化の問題はウェイトだ。車両重量は、W12モデルより70kg重い。とはいえ、大人ひとり分ほどの増加で、2.5t級の高級サルーンにとってはたいしたハンデではないだろう。それ以上の欠点はバッテリー容量だ。グロス18kWh/ネット15kWhというのは、レンジローバーP510eやメルセデス・ベンツS580eなどには遠く及ばない。そのため、EV航続距離は40km程度。ライバルの中には80kmを超えるものがあるのと比べれば、だいぶ見劣りする。

V6は、ベンテイガ・ハイブリッドの2995ccTFSIではなく、2894ccユニット。ショートストロークで圧縮比が低く、ブースト圧が高いそれは、アウディでいえばSモデルではなくRSモデルのエンジンだ。

後輪偏重のトルク配分を行うクラッチ式アクティブ4WDシステムや、3チャンバー式エアサスペンションは、フライングスパーの他グレードにも装備されるメカニズム。ただし、駆動用バッテリーがスペースを要するため、ハイブリッドに後輪操舵システムを組み込むことはできなかった。

また、このバッテリーにより、前後重量配分も変化している。2020年に計測したW12モデルはフロントが53%だったが、ハイブリッドはリアに52%の荷重がかかっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

ベントレーの人気画像