ベントレー・フライングスパー 詳細データテスト 快適さと走りの好バランス 電池容量と静粛性に難が

公開 : 2022.08.27 20:25  更新 : 2022.09.06 05:17

走り ★★★★★★★★☆☆

諸元表上では、これは現行フライングスパーでもっとも加速の遅いモデルだ。しかし、それほど大きな差ではない。スタンディングスタートでは、たしかに物足りなさはない。2.5tのクルマとしては、かなり速いと言ってもいい。

そして、これがベントレーとしては物足りないというひとびとは、おそらくこの新たなハイブリッドが記録した数字を見直してみるべきだ。ゼロスタートで97km/hには4.4秒、161km/hには10.2秒で到達し、ゼロヨンは12.8秒なのだが、これは2013年に計測した先代フライングスパーW12に勝っているのだ。

発進加速はV8やW12には及ばないが、2.5t級のクルマとしてはかなり速い。モーターとエンジンの切り替え点がペダルの踏み応えで察知できれば、もっと運転しやすくなるだろう。
発進加速はV8やW12には及ばないが、2.5t級のクルマとしてはかなり速い。モーターとエンジンの切り替え点がペダルの踏み応えで察知できれば、もっと運転しやすくなるだろう。    WILL WILLIAMS

しかし、全開加速ばかりがこのクルマにできることではないし、本領を発揮する場面でもない。容易に引き出せる大トルクにより、シフトダウンなしで追い越し加速をやすやすとやってのけ、高速道路への合流も余裕。必要とあれば、カントリーロードをかなりのペースで走ることもできる。

しかし、エレクトリックモードでガソリンエンジンが停止すると、従来のエンジン車を上回るみごとな洗練性と機械音の静かさ、そしてキャビンの平穏さをみることになる。V6ユニットは、巡航速度の回転域ではもっとも存在感が希薄になるが、それでもその存在に気づくには十分だ。

また、そうではない領域では、市街地でも郊外でも、ラグジュアリーさを増してくれる。会話や音楽の背景に、控え気味のハミングを聞かせてくれる。

パワートレインのモードは、エレクトリック/ハイブリッド/チャージホールドで、最後のひとつは走行モードをスポーツにすると自動的に選択される。

エレクトリックでは、パフォーマンスはかなり穏やかだが、これはモーター出力が136psしかないのが理由だ。スロットルペダルの踏み応えに、エンジンを停止したまま走るのに役立つようなフィードバックは、望んでも得られない。

一般的にはスロットルペダルを半分以上踏まなくても、エンジンは目覚める。坂道を登ったり、交通の流れに合わせて加速すれば、意図せずそうなることが多い。ペダルのフィードバックで踏み込み具合を感じ取れれば、ドライバビリティは全般的に向上するはずだ。

いっぽう、ブレーキはパワフルで、期待に応えてくれるだろう。22インチタイヤを履いたテスト車は、2020年に計測した21インチ仕様のW12モデルより優れた制動性能を発揮した。ハードブレーキング時にはかなりダイブするが、スタビリティは悪くなかった。

ペダル踏力に対する制動力の出方も、ハイブリッド車としては上出来で、深く踏み込んだときの曖昧さも小さい。ただし、初期レスポンスのチューニングがもっとよければ、どのモードであってもスムースなドライビングが楽にできるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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