テスラ・モデルS 詳細データテスト 市販車最高の加速 全体の洗練度は不足気味 右ハンドルがほしい

公開 : 2023.08.12 20:25

結論 ★★★★★★★☆☆☆

市販車最高の加速性能を持つクルマをつくろうと志したテスラは、たしかにそれを成し遂げた。このモデルSプレイドのパフォーマンスレベルは、これまでなら億単位の金額を積まないと買えなかったハイパーカー並みだが、それを機能的なサルーンで実現してみせたのだ。

11万3480ポンド(約2065万円)という価格は、絶対値としては決して安くはないが、同等の加速をするクルマと比較すればとんでもなく安い。パフォーマンスと価格のバランスという話なら、間違いなく成功を収めた1台だ。

結論:驚くほど速いが、全面的に熟成されたパフォーマンスサルーンではなかった。
結論:驚くほど速いが、全面的に熟成されたパフォーマンスサルーンではなかった。    JOHN BRADSHAW

それ以外の点でもよくできたクルマだ。すばらしく効率的で、結果として航続距離は長い。しかもキャビンは広く、室内に用いられる技術は万人受けはせずとも十全に機能し、ほかの自動車メーカーとの差別化もバッチリだ。

しかしながら、日々のルーティンワークをこなすには十分満足できても、その洗練度はハンドリングを引き換えにできるだけのエクスキューズにはならない。よくてせいぜい活気のない、最悪はよそよそしくてイヤな気分にさえなるそれは、とくにトラックモードで思い知らされる。このモード、クローズドコースを攻めるようなときにはさらに、ブレーキ性能の不足も突きつけてくる。

このプレイド、とんでもなくみごとな仕事をやり遂げたのも事実だが、パフォーマンスサルーンであれば一芸にとどまらない能力を期待したいのもまた人情というもの。その一芸がどれだけとんでもない偉業であってもだ。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

はじめてプレイドのスロットルペダルを蹴っ飛ばしたときには、あまりの加速力によろめいたが、それでも全力は発揮されないスポーツモードだった。それでも、これを負かせるパフォーマンスカーはほとんど見つからないくらい速いのだから驚きだ。

マット・ソーンダース

テスト車にステアリングホイールが装着されていたのを喜ぶべきか悲しむべきか、確信が持てずにいる。例の操縦桿的な操縦系を試したかったのだ。しかし、丸いリムの有無にかかわらずギア比は一緒と聞いて、ぐるぐる回してみた途端イヤになる可能性が頭に浮かんだ。

オプション追加のアドバイス

操縦系はちゃんと丸いリムのステアリングホイールを選びたい。ホイールは21インチにして、来るべきトラックパッケージのブレーキを迎え入れる準備をしておきたい。パフォーマンスを引き出した走りには必須アイテムだ。エンハンストオートパイロットと完全自動運転機能は、欧州では用をなさない。

改善してほしいポイント

・早く右ハンドル仕様を用意していただきたい。
・このクルマに見合ったブレーキのアップグレードが必要だ。とくに、エネルギー回生をオフにした場合はそれを痛感する。
・運動性には、もっと透明性と優れたバランスがほしい。手始めにステアリングを改良するべきだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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