テスラ・モデルS 詳細データテスト 市販車最高の加速 全体の洗練度は不足気味 右ハンドルがほしい

公開 : 2023.08.12 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

ポルシェタイカンがスーパーサルーンだけど電動だとするなら、モデルSプレイドは1970年代のマッスルカーの電動版、といった趣だと言ってもいい。これがニュルブルクリンクにおける市販EVのレコードホルダーで、トラックモードを備えるクルマだと聞いたら、驚かれるのではないだろうか。

振り返ると2013年、英国デビュー間もないモデルSをテストしたとき、われわれは「運動性能は満足いくものだが、特別ではない」と結論づけた。公道上での振る舞いに関しては、当時とまったく同じ感想だ。

ワイドなタイヤはグリップがみごとで、ボディコントロールも悪くない。しかし無感覚なステアリングが自信を挫き、走り好きなドライバーを欲求不満にする。直線加速を別にすれば、だが。
ワイドなタイヤはグリップがみごとで、ボディコントロールも悪くない。しかし無感覚なステアリングが自信を挫き、走り好きなドライバーを欲求不満にする。直線加速を別にすれば、だが。    JOHN BRADSHAW

ワイドなテスラ専用ミシュランはかなりのグリップをもたらし、速めのステアリングは十分に鋭い反応ぶり。アダプティブダンパーを備えるエアサスペンションは、良好だが地味なボディコントロールをみせる。ほとんどのドライバーが、一般道ならこれで十分だと思うだろう。

いっぽう、スーパーサルーンらしさをどことなくでも求めるなら、プレイドには心動かないはずだ。かなり幅が広い上に左ハンドルのみなので、自然に一般道で攻める気は失せる。左カーブで、周囲を視界に収めるのが難しいのだ。

広くて見通しのいい道でも、このモデルSはコンフィデンスをさほど引き出してくれない。その元凶はステアリングだ。はじめは、手応えがよくて比較的セルフセンタリングが強めに感じる。しかしすぐに、それ以上はなにもないことに気づいてしまう。前輪になにが起ころうと、手応えは一定のまま。やや不気味で、戸惑いを覚える。もしも熱中しすぎて、パワーをかけるのが早すぎてしまうと、アンダーステアに陥ってしまう。

加速テストの最中には、260km/h手前くらいで進路を外れはじめるようにも感じられた。

自動運転に関しては、欧州の厳しい基準に遭ってお手上げというありさまで、残されたのはきわめて初歩的な運転アシストシステムだった。レーンキープアシストはやたらと介入してくるし、オフにするには何度かタップする手間が必要。アダプティブクルーズコントロールは容易に揺らぐものではないが、加速が遅すぎる。車線追従も、切っておかないと修正舵を一切見逃してくれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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