2022年:MG 4 EV

MG 4は、ブランドだけでなく、欧州のEV市場全体の運命をも一変させてしまった。

わずか3年前、EVを購入しようと思えば選択肢は2つだった。4万ポンド(約800万円)を軽く超える金額を払って、実走行距離が480kmにようやく届くクルマを買うか、あるいは予算を抑えて満充電で160kmも走らないクルマを受け入れるかのどちらかだ。とはいえ、ローエンドのモデルさえ決して安くはなかった。ミニ・エレクトリックのハッチバックは3万1000ポンド(約620万円)もしたのだ。

2022年:MG 4 EV
2022年:MG 4 EV

そこに登場したのがMG 4だ。2万5995ポンド(約520万円)という価格で350kmの航続距離を実現。MGにとっても大きな飛躍となり、1990年代後半以来初めて市場競争力のあるブランドへと変貌させた。

MG 4は欧州主要メーカーに対する警鐘(あるいはモーニングコール)そのものだった。内燃機関で数十年にわたり市場を支配してきた彼らが慢心に浸っている隙を突いたのだ。

2023年:ダチア・ダスター

ルノーの後ろ盾を得て、ルーマニアのダチアが欧州主要市場に参入した時(西欧では2005年、英国では2013年)、大半のメーカーはその実力を低く見積もっていた。

多くのメーカーが欧州での超低価格車の販売を諦めていたところへ、ダチアは勝機を見出した。無駄な装飾を一切排除しながら、非常に良く設計されたクルマを投入したのだ。

2023年:ダチア・ダスター
2023年:ダチア・ダスター

結局のところ、ソフトタッチのプラスチックや複雑すぎるインフォテインメント・システムがなくても、移動の道具であるクルマ自体がしっかり機能していれば大勢の顧客を満足させることができると判明した。

しかし、真の飛躍を遂げたのは最新型となる3代目ダスターである。このモデルはセールスポイントをほぼ完璧に磨き上げ、インフレが深刻化する現代において前モデルとほぼ同価格を維持しながら、格段に優れた走行安定性と快適性を実現した。ダスターが欧州で人気車種第2位(法人を除く個人購入者)を維持しているのも当然だ。

2024年:ヒョンデアイオニック5 N

エンジニアは、主に自らが開発に携わったクルマについてよく語るが、他社のクルマに話題が及んだ時こそ、彼らの話に耳を傾けるべきだ。

アイオニック5 Nほどの称賛を浴びるクルマは稀だ。非公式ながら、競合他社のエンジニアたちでさえ、このヒョンデの楽しさと、疑似シフトチェンジ機構のようなクールなアイデアを高く評価している。彼らは650psのアイオニック5 Nを高性能EVの新風と捉え、現実的な価格でスリルと実用性を両立させたことにリスペクトを示している。多くのエンジニアが、いつか同様のプロジェクトに携わりたいと願っている。

2024年:ヒョンデ・アイオニック5 N
2024年:ヒョンデ・アイオニック5 N

アイオニック5 Nは、過去の重荷をほとんど背負っていないという点が大きなメリットとなっている。ポルシェタイカンのように、60年にわたる優れたドライバーズカーのブランドという重圧を背負ってはいない。つまりヒョンデは、手段を問わず純粋にドライバーの笑顔を引き出すことを目的に、EVを自由に創造できたのだ。

アイオニック5 Nは目的地への移動手段としてではなく、純粋に楽しむために走りたくなる、初めてのEVである。この点だけでも、ゲームチェンジャーとして記憶されるに値するだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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