フェラーリSF90ストラダーレ 詳細データテスト 記録的な速さ 物足りない限界域でのハンドリング

公開 : 2021.11.13 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

SF90の名は、エンツォ・フェラーリが1929年に、アルファ・ロメオのセミワークスチームとしてスクーデリア・フェラーリを立ち上げてから90周年を記念して開発されたことを意味する。

ベースとなるモノコックシャシーは、マラネロ工場から道を挟んだ向かい側で製造されている。フェラーリの傘下にあるかつての名門カロッツェリア、スカリエッティの担当だ。

F154系V8はボアアップで3.9Lから4.0Lへ拡大。搭載位置をより低くするなど、多岐にわたる改良を施し、最高出力は781psに達している。
F154系V8はボアアップで3.9Lから4.0Lへ拡大。搭載位置をより低くするなど、多岐にわたる改良を施し、最高出力は781psに達している。    LUC LACEY

完全新設計となるそれは、中空鋳造アルミや新規採用の軽量アルミ合金の部材、カーボンファイバーのリアバルクヘッドなどを使用。これまでのフェラーリが用いてきた同等の構造体に対し、曲げ剛性は20%、ねじり剛性は40%、それぞれ向上している。もちろん、重量増加することなしにだ。

パワートレインは、F154系ユニットの改良・拡大版で、781psを発生するV8ツインターボをベースに、動力を発生する交流同期モーターを3基と、7.9kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載。さらに、極めて高性能な出力制御用の電子機器が付随する。

もっとも大型でパワフルなモーターは、フェラーリいうところのモーター/ジェネレーターユニット・キネティックス(MGU−K)で、三相アキシャルモーターをエンジンと8速DCTとの間に設置する。単体での最大出力は204psだ。

F1マシンに用いられたテクノロジーに由来するといわれ、市販車のための走る実験室というレースのエクスキューズを地で行くようなメカニズムだ。もっとも、フェラーリはむしろそのモータースポーツの最高峰へ挑み続けるために、市販車を造りはじめた会社なのだが。

さらに、フロントには合計で270psを発生する2基のラディアスモーターを搭載。それぞれにトランスミッションを設置して、左右各輪を独立駆動することで、左右非対称の電動トルクベクタリングを実現する。

ただし、駆動用バッテリーの出力が足枷となり、3モーターすべてが同時に本領を発揮することはできない。合計での最大出力は245psに制限されてしまい、通常走行時には、ハイブリッドシステム全体でも220psに絞られている。

4つのパワーソースを全開にした場合のカタログ値は1001ps/7500rpm。なお、トルクは明示されていない。もっともアグレッシブな走行モードであるクオリファイを選んだ場合のみ、これをわずかに上回るピークパワーを得られるというが、あくまでそれは瞬間的なものにすぎない。

重量のマネージメントは、このクルマに最新のフェラーリらしいパフォーマンスとハンドリング、そしてフィールを与えるための重要事項だった。その点、電動化デバイスが追加されたことを考えると、マラネロはいい仕事をしたといえるだろう。

軽量化オプションをすべて装備した場合、乾燥重量の公称値は1570kgに収まる。270kgに及ぶハイブリッドシステムを背負っていることを踏まえれば、これは驚くほど軽量だ。テスト車はさまざまなオプションを装着し、燃料を満タンにした状態で実測1698kgだったので、マラネロが謳う数字にはかなり信憑性がある。

ここから割り出される馬力荷重比は638ps/tで、ブガッティ・ヴェイロン・スーパースポーツやラ・フェラーリの領域に達している。ただし、ロータスリマックの最新ハイパーEVは、さらにその上を行くが。

SF90のV8ユニットは、フェラーリの既存ミドシップモデルより低く搭載できるよう設計変更された。F8トリブートの3.9Lユニットに対し、シリンダーヘッドや吸排気系の取り回しは刷新され、吸気バルブやシリンダーボアは拡大。より高効率なターボと噴射圧を高めた燃料インジェクションも装備された。

8速DCTも新型で、F8トリブートの7速ギアボックスよりシフトスピードを33%速めた。また、多段化しながら10kg軽量化しているが、ここには電動化モデルならではのカラクリがある。リバースギアを廃止して、フロントモーターが後退を担うのだ。

サスペンションはF8トリブートと同じく、前ダブルウィッシュボーン/後マルチリンク。前後ともコイルスプリングだが、リアのレートは高められた。アダプティブダンパーは標準装備される。

オプションのアセット・フィオラノ仕様では、チタン素材のよりハードなスプリングと、モータースポーツのスペシャリストであるマルチマティック製の高性能パッシブダンパー、ダウンフォースを増加するリアウイングが装着される。

また、各部のパネルが重量軽減に寄与するカーボンファイバーへ素材置換される。ただし、カーボンホイールはこれに含まれない、別建てのオプションアイテムだ。カーボンセラミックブレーキは標準装備で、タイヤは通常がミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。テスト車が履いていたのはよりハイグリップのカップ2Rで、これは有償追加メニューとなる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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