ヒョンデがあえて「リスク」を取る理由 斬新デザインの7人乗りSUV チェス戦略とは

公開 : 2023.08.16 18:45

ヒョンデはなぜ、最近のモデルに斬新なデザインを採用しているのか。7月に発表された新型SUVのサンタフェは、角ばった無骨なスタンスを特徴とします。デザインで「攻める」理由について、責任者に問いかけました。

あえてリスクを冒すのはなぜか

ヒョンデが7月に発表した新型SUV、サンタフェではこれまであまり見られなかった斬新な外観が採用された。この特徴的なデザインに至った経緯について、同社のデザイン責任者であるイ・サンヨプ氏が語ってくれた。

7人乗りSUVの新型サンタフェは、これまでのヒョンデのクロスオーバーやSUVとは少し異なり、丸みの少ない無骨なスタンスとなっている。

ヒョンデ・サンタフェ
ヒョンデ・サンタフェ    ヒョンデ

「前モデルと比べると大きな変化です」とイ・サンヨプ氏は言う。こうしたデザインの方向性は「リスクを冒す」ものだという。

「サンタフェはヒョンデ最大のモデルの1つです。失敗は許されません。ですから、これはとても重要なことでした」

「4年半前、この(サンタフェの)デザイン・プロジェクトを始めました。わたし達は常にビッグデータの情報をチェックして、将来のトレンドを予測しています。パンデミック(新型コロナウィルスの流行)が起こる前のことですが、キーワードの1つは主流になってきた『アウトドア』文化です。わたし達は、都会生活とアウトドアの両方をカバーする方向性を選びました」

「箱型のSUVの場合、プロポーションのバランスがとても重要です。サンタフェは、このセグメントでは前例のない、非常にシンプルでボリュームのあるボディ・サーフェスを持ち、最大21インチのホイールによって支えられています」

「箱型とはいえ、精密なディテールのタッチを加えたい。そして大きな課題が空力です。空力エンジニアは、ボクシーなクルマを『エアロ・ディザスター(空力の惨事)』と呼びます。だから、わたし達はそこに挑んだのです」

「このクルマの抗力係数はCd値0.29です。わたし達はエアロダイナミクスにおいて多くのことに挑戦しました。このセグメントではかなり珍しいアクティブ・エアロ・シャッターがフロントにあり、またそれを助ける垂直のエアカーテンもあります。さらに、ホイールハウスも丸くなり、空力効果が大幅に向上しています」

「昔のポルシェ993(911)がそうだったように、リアフェンダーのフレアは後ろに向かって柔らかさを増しています。はじめはもっと角ばったデザインだったのですが、実際には空力の助けになっていないことに気づいたんです」

「このデザインは、機能に従う形であり、SUVにできることを強調するものです」

SUVらしいデザイン 実用性は?

このクルマは写真では大きく見えるが、実際にはそうでもない。一方、アイオニック5はその逆である。筆者がこのことをイ氏に尋ねると、彼は次のように答えた。

「その通りです。アイオニック5を最初に見たとき、誰もホイールベースが3mあるとは思わないほど、ソリッドでタイトです。コーナーワークも豊富ですね。そのコンパクトなキャラクターを作るために、コーナーはできるだけ丸みを帯びています。サンタフェが大きく見えるのは、コーナーを可能な限り引っ張り出しているからです。大きなテールゲートは、厚板のような大きさで、全幅をデザインの要素として使っています」

ヒョンデ・サンタフェ
ヒョンデ・サンタフェ    ヒョンデ

「製品によって、どのようなデザインツールを使うかが決まります。しかし、SUVの意図するところは明らかに『自分は大物だ』と言うことです」

インテリアのコンセプトは「思いやり」だとイ氏は主張する。インストゥルメント・パネルは手が届きやすいように曲面で、「腕で弧を描いたときの曲率」になっているという。「自動運転レベル4か5になるまでは、最も重要なのは道路から目を離さないことであり、すべてがコントロールしやすくなければなりません。そのため物理キーを排除しませんでした」

「HVACは絶対に物理キーです。これはいつも使うものですから、見ずとも手を伸ばすだけです」

リアドアの後ろにはグラブハンドルがあり、ドア内側のステップに足をかけて登ることができる。

「ルーフラックへのアクセスは、SUVの中でも最も簡単な部類に入ります」

トランクの開口部も広い。

「(セダンには)トランクがありますが、SUVにはテールゲート・スペースがあります。荷物を運ぶというより、ライフスタイルのスペースですね。そこで、荷室をできるだけ強調するために縦のラインを強くし、シャットフェイスと組み合わせることで、テールゲートをワイドにすることができました」

サンタフェのトランク開口部の幅はほぼ1300mmである。

「すべては家族のために。全席にフルサイズのカップホルダーが2つあり、また全席にUSBポートが付いています」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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