ジープ・アベンジャー 詳細データテスト 低重心ゆえの良好な操縦性 日常的な乗り心地には注文あり

公開 : 2024.05.18 20:25

結論 ★★★★★★★☆☆☆

何十年にもわたり、ジープの欧州市場での成功はきわめて散発的なものだった。角張った外観の古いチェロキーだったり、最近のラングラーレネゲードが一部のファン層を魅了したが、大衆受けするブランドにはなれなかった。その状況を変えるかもしれないのが、今回のアベンジャーだ。

ジープ史上最小のモデルで、初のピュアEVは、臆することなく時流に乗っている。限られた後方視界や内装に多用された硬いプラスティックなど小さなアラはあっても、それを容易に見過ごせる十分好ましいクルマだ。個性があり、日々の相棒として楽しませてくれて、小さくても多才なEVとして期待に十分応える働きをみせる。

結論:パーフェクトなクルマではないが、ジープを新たな方向へ成功裡に導くだろう。
結論:パーフェクトなクルマではないが、ジープを新たな方向へ成功裡に導くだろう。

それでも、乗り心地は減点要素だ。充電スピードや航続距離、室内の広さは、もう少し改善を望みたいものの、どれもおおむね優秀だ。ところが乗り心地は、路面の状態が不十分だと粗くなることがあり、低い速度ではより耐え難いものとなって、クルマ全体の評価を下げてしまう。快適性をもう少し高めてくれるなら、引き換えにハンドリングを多少は妥協しても構わない、とさえ思えるほどだ。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

このクルマの硬いスプリングは、やや薄めの荷室フロアと相まって、スピードバンプでうるさい音を立てる。荷室内で充電ケーブルがバタつく音が聞こえて気になるだろう。もっとも、これはジープに限った話ではないのだが。

リチャード・レーン

アベンジャーは嫌いになれないクルマだが、ステランティスの全車に共通する悪癖が見られる。乗り込んでからすんなり走り出すことができないのは、かなり強くブレーキを踏み込み、スタートボタンを長押しする必要があるから。Dレンジに入るにも2〜3秒かかる。どうにかしてほしい。

オプション追加のアドバイス

まず、黄色いダッシュボードは最上位グレードのサミットでしか選べない。フロントシートヒーターとワイヤレス充電器も標準装備となるが、それらは下位グレードでもオプションパッケージで追加できる。

改善してほしいポイント

・パフォーマンス向上を。今のままでは遅い。
・粗い路面で過敏な乗り心地を抑えてほしい。
・ボディ同色ダッシュボードを、最上位機種のイエローだけでなく、全車に設定してもらいたい。
・もっとソフトなタッチのインテリアトリムを使ってほしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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