【現役デザイナーの眼:スバル・トレイルシーカーとトヨタbZ4Xツーリング】新時代を象徴する2台 EVにもアドベンチャーテイストを

公開 : 2026.05.20 11:45

bZ4Xツーリングは『やりすぎない上手さ』が秀逸

一方で、トヨタ版となるbZ4Xツーリングは、トレイルシーカーほどベース車から印象を変えていませんが、それがむしろトヨタらしいと感じます。

フロントはbZ4Xと同様ハンマーヘッドデザインを採用し、基本的なデザインは継承。そのうえで、バンパー下端の樹脂パーツのみを専用品に変更し、アウトドア感を自然にプラスしています。

トヨタbZ4Xツーリングのフロントはベース車からほとんど変わらりませんが、バンパー下端デザインを変更することで、ボディ全体と相まって適度なアドベンチャー感を演出しています。
トヨタbZ4Xツーリングのフロントはベース車からほとんど変わらりませんが、バンパー下端デザインを変更することで、ボディ全体と相まって適度なアドベンチャー感を演出しています。    トヨタ自動車

この『やりすぎない上手さ』は非常に秀逸で、都会的で洗練された印象を残しながら、しっかりラギッドな雰囲気も持たせています。最小限の変更で最大限の効果を出しているデザインですよね。

もちろん、こちらもリアを伸ばしたことによる効果は非常に大きいです。従来のbZ4Xよりも安定感があり、またルーフレールとの組み合わせで、かなりアドベンチャー感のあるシルエットになっています。

機能感を前面に出した造形

特にこのフローティングタイプのルーフレールは単なる機能部品ではなく、デザインの主役と言ってもいい存在。おそらくスバルとの協業がなければ、ここまで機能感を前面に出した造形にはならなかったでしょう。

インテリアは薄型のインパネと大型14インチディスプレイを中心とした、非常に現代的な空間。特に印象的なのが、センターコンソールに設置されたスマホ2台分のワイヤレス充電スペースです。

フローティングタイプのルーフレールは単なる機能部品ではなく、デザインの主役と言ってもいい存在です。
フローティングタイプのルーフレールは単なる機能部品ではなく、デザインの主役と言ってもいい存在です。    トヨタ自動車

これは海外製EVでよく見かける装備ですが、実際かなり便利で、長距離移動を前提にした使い勝手の良さを感じさせますね。ちなみにこれらはトレイルシーカーでも同様の装備を持っています。

結果として、ただのbZ4Xのワゴン版ではなく、『ツーリング』という名前にふさわしい付加価値を持った1台になっています。

EVにも『クルマらしい自由』を

これまでEVにアドベンチャーテイストのクルマが少なかった理由は、単純に『遠くへ行けなかった』からだと思います。航続距離が短く、充電時間も長い。だからEVはどうしても近距離用、街乗り用という発想になりやすかったのでしょう。

しかし今では、一充電で700kmをカタログスペックに掲げるクルマが多く登場し、急速充電性能も大きく進化。こうなると、EVの役割は大きく変わります。

トレイルシーカーのインテリア。トレンドである薄型のインパネに、14インチディスプレイ、2台分のスマホ非接触充電器など充実した装備で、長距離移動を想定した機能やデザインになっています。
トレイルシーカーのインテリア。トレンドである薄型のインパネに、14インチディスプレイ、2台分のスマホ非接触充電器など充実した装備で、長距離移動を想定した機能やデザインになっています。    スバル

週末に自然へ出かける。家族で長距離旅行に行く。キャンプ道具をたくさん積んで、趣味を楽しむ。そうした『クルマらしい自由』を、EVでも当たり前に楽しめるようになりそうです。この2台は、単なる新型車ではなく、EVの価値観そのものを変えていく存在なのかもしれませんね。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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