【詳細データテスト】シボレー・コルベット ミドシップ化で磨いた走り 高い実用性 唯一無二の存在感

公開 : 2022.07.02 20:25  更新 : 2022.07.11 09:21

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

シボレーは過去に幾度も、コルベットのミドシップ化を検討しながら頓挫してきたが、ついにそれを成し遂げた。そのために白紙から設計したことが、右ハンドルの設定が可能になり、しかも誰もがこれまでと変わることがないと思っていたデザインや構造が、技術的な制約を受けずにモダナイズできた。

新開発のシャシーは、バックボーン式アルミスペースフレームで、6.2LのV8は今回も縦置きされるが、置き場所は2シーターのキャビンの背後。8速DCTと、トルクベクタリング機構を備えるリアのアクティブデフを組み合わせ、後輪を駆動する。

ルーフパネルは、ハンドル3つでロックを解除する。ふたつはフロントウインドウ上部、もうひとつは後部の頭上だ。取り外してエンジン後方のトランクに収める作業は、ひとりでもできるが、できれば手助けがほしい。
ルーフパネルは、ハンドル3つでロックを解除する。ふたつはフロントウインドウ上部、もうひとつは後部の頭上だ。取り外してエンジン後方のトランクに収める作業は、ひとりでもできるが、できれば手助けがほしい。    LUC LACEY

エンジンはほぼアルミ製だが、シリンダーライナーは鋳鉄製で、2バルブをプッシュロッドで作動させるシリンダーヘッドを備える。欧州のエミッション規制に適合させるため手が入り、北米仕様より出力は低下しているが、482ps/62.5kg-mというのは、2022年現在、8万2290ポンド(約1358万円)のスポーツカーとしてはなかなか気前のいい数字だ。

エンジン搭載位置の刷新で、再考を強いられたのが、長年にわたりコルベットが使い続けてきた横置きリーフスプリングのサスペンションだ。これまでのコルベットが、きわめて低いボンネットやフェンダー、そしてシルエットを実現してきた要因であるが、ミドシップでこれを使うことはできない。

そこでC8コルベットのダブルウィッシュボーンサスペンションには、新たに調整可能なコイルオーバーと磁性流体ダンパーが装着された。コイルスプリングは、リーフより楽にファインチューニングでき、オーナーがホイールジオメトリーを調整する自由度が上がった。

テスト車に装備された磁性流体ダンパーは、英国仕様では1580ポンド(約26万円)のオプション。だが、アップグレードパッケージのZ51は標準装備で、ハードなコイルスプリングとブレンボ製の高性能版ブレーキ、ミシュランの高性能タイヤ、パフォーマンスエキゾーストロー技アードのファイナルレシオ、アクティブトルクベクタリング機構を持つアクティブデフが備わる。

このコルベットは、ミドエンジンスポーツカーの基準に照らすと、大柄で重い。4634mmの全長は、ロータスエミーラより220mm以上、マクラーレンアルトゥーラよりほぼ100mm長い。実測重量は、満タンの実走可能な状態で1679kgで、だいたいエミーラより230kg、アルトゥーラより180kg重い。

エクステリアのデザインはインパクト満点で、はっきりした線で構成されている。これまでにないキャブフォワードのフォルムで、これにコルベットならではのデザイン要素が組み込まれているのだが、このマッチングには慣れるまで時間がかかりそうだ。

ボンネット周りはランボルギーニアヴェンタドールのようなところも、フェラーリF430のようなところもある。ディズニー・ピクサーがデザインしたスーパーカー、とでも言ったらいいだろうか。陽気で好ましく、しかしシンプルだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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