【詳細データテスト】ポルシェ・カイエン 圧倒的な速さ 車重に負けないグリップ 快適性と装備は不満

公開 : 2022.07.30 20:25  更新 : 2022.08.22 15:06

走り ★★★★★★★★★★

3年前にテストしたランボルギーニウルスは、0−97km/hが3.3秒、0−161km/hが7.8秒、ゼロヨンが11.6秒だった。ここまで大きくて重いクルマでは、決して見ることがないと思っていた数字の羅列に、すっかり打ちのめされたものだ。

しかし、必然と言うべきか、それらのタイムが破られるときが来た。ヴァイザッハの面々がそれを口にすることはないだろうが、それを狙ったのが確かだろうと思えるのは、ポルシェフォルクスワーゲングループ最速SUVの座を奪回するべくカイエン・ターボGTを生み出したのだということ。そうであれば、まずは上々のスタートを切ったと言える。

SUV最速を奪回できるパフォーマンスは、エンジンだけでなく、シャシーや電子制御などが高いレベルでバランスしていればこそ。ブレーキも強力で、しかもコントロール性に優れる。
SUV最速を奪回できるパフォーマンスは、エンジンだけでなく、シャシーや電子制御などが高いレベルでバランスしていればこそ。ブレーキも強力で、しかもコントロール性に優れる。    MAX EDLESTON

暖かい日のドライ路面で、2251kgのカイエンは3.1秒で97km/hに、7.6秒で161km/hに達し、ゼロヨンは11.4秒。SUVという前提を抜きに考えても、パフォーマンスカーとしてかなりのタイムだ。メルセデスAMG GT 63 4ドアクーペや、2017年にテストした日産GT-Rよりも速いのだから。

このパフォーマンスを産んでいるのは、強力なパワーと、それによって911の中間グレード並みとなっている馬力荷重比だけではない。完成されたグリップとトラクション、そしていつもどおりトップレベルの先進的な電子制御とのコンビネーションによるところも大きい。

これほどのパワーとウェイトがあるクルマなら、路面にペンキを塗りたくるように、そのトルクを撒き散らしてダッシュすると思うだろう。ところが実際には、ローンチコントロールが、物理的に妥協のないクルマであるかのように、乱れのないスタートを決める。

急発進をすると、ATギアボックスが余すところなくトルクを使い、カタパルトから打ち出されるように飛び出していく。中間ギアの低いほうを、マジシャンがカードを扱うように目まぐるしく切り替え、エンジンの力を引き出すのだ。

このパワーデリバリーと引き換えに、また2500rpm以下では多少ながらも明らかに出るターボラグや、低められたV8ターボの圧縮比により、低速トルクは小さいながらも明らかに損なわれている。

それでも、マニュアルモードでシフトアップポイントを自分で決めながらフルスロットルにすると、3速や4速に入れるまでタフな操作を強いられる。もっともワイルドな状態では、理屈抜きの凶暴さを見せつける機会を逃すことはない。

ノーマルモードなら、V8エンジンは遠くで鳴っているような音を聴かせるのみで、ギアボックスはなめらかで融通が効く。スムースで、機械的に洗練された走りをみせるのだ。しかしながら、ステアリングホイールに取り付けられたダイヤルを時計回りに180°ひねり、スポーツプラスモードに入れると、突如として、走りのキャラクターがガラリと変わる。

操縦系の手応えが増し、レスポンスも高まり、エンジンは低音の効いた好ましいサウンドを放つ。ギアボックスは早めのシフトダウンでエンジン回転を高く保ち、低いギアをより長くホールドして、音の聞こえる範囲一帯にポルシェらしいスポーティさを知らしめる。

スロットルペダルのトラベルはかなり大きいので、カーペットまで踏み込んだらどれほど速いのか、すぐに見積もることを難しい。その答えは、ありふれているが、かなりのものだとしか言いようがない。

カーボンセラミックブレーキの効き方はほどよく、効きの増し具合も扱いやすい。制動力と耐フェード性も文句なく、この手のヘヴィウェイトなパフォーマンスマシンに期待するレベルだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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