ポルシェ・カイエン 詳細データテスト 無駄なアシストのないV8 クラス最高水準のドライバビリティ

公開 : 2024.03.09 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

改良版カイエンは、ターボやGTSより手頃なグレードの、V8搭載車が加わった。エントリーモデルは353psの3.0L V6だが、今回テストするカイエンSは、アウディと共同開発したEA825型4.0L V8を搭載。最高出力は474ps、最大トルクは61.2kg-mだ。

7年前にパナメーラターボで初採用されたEA825だが、今回のユニットには新型のターボと電子制御ウェイストゲートが搭載され、レスポンスが改善した。吸気カムも更新され、高負荷時から低負荷時までプロファイルを素早く切り替え。さらに磁気抵抗式カムシャフトセンサーにより、カムの位置決めも精確に。パフォーマンス向上とCO2排出量削減を両立した。冷却系とピストンリングの最適化で、耐久性も高めた。

英国にまず導入されるパワートレインは5種類で、そのうち3種類がPHEV。今回のSは、電動アシストを持たないV8だ。
英国にまず導入されるパワートレインは5種類で、そのうち3種類がPHEV。今回のSは、電動アシストを持たないV8だ。

このカイエンSは、電動アシストを一切持たないモデルだが、英国へ導入される5仕様のうち、3仕様がPHEVで、V6ベース2タイプと、V8ベースで739psのターボEハイブリッドだ。

これらのPHEVは以前より8.0kWhアップした25.9kWhのバッテリーを搭載。ギアボックスに新型の駆動用モーターを組み込み、よりパワフルでありながら、エネルギー回生効率も30%アップしたという。摩擦ブレーキで15km/h以下に落とした後は、歩くようなペースで進むこともできる。

全車とも、トランスミッションは8速ティプトロニックSトルクコンバーターATをキャリーオーバー。スポーツとスポーツプラスの各モードでは、変速スピードが短縮される。ノーマルモードはこれまで以上に効率重視で、ソフトウェアはそのときどきで可能な限り高いギアを選ぶ。

シャシーでは、スティールスプリングとダブルバルブの新型アダプティブダンパーのセットを、カイエン初採用。伸び側と縮側を独立でき、走行モードによって乗り心地やボディコントロールのキャラクターをおきく変えることができる。

2チャンバー式エアスプリングを搭載する仕様も設定。ポルシェはスティールよりエアのほうが性能は上だと断言しており、特に低速で効果的としている。アクティブスタビライザーのPDCCと、電子制御LSDのPTVプラスは、全車で選択可能だ。

モノコックはほぼアルミだが、ボディパネルのアルミ使用比率も拡大。2160kgという公称重量は、先代Sよりはシリンダー数増加もあって140kg重くなっているが、V8搭載のレンジローバー・スポーツよりは270kg軽い。90Lタンクを燃料で満たしての実測値は2256kgだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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