メルセデス・ベンツEQA 詳細データテスト 既存車ベースゆえの妥協 走りはほどほど 価格は高い

公開 : 2021.11.27 20:25  更新 : 2021.11.28 12:43

意匠と技術 ★★★★★★☆☆☆☆

5万ポンド(約700万円)以下のEVには、技術的にお決まりになりつつある点がいくつかある。たとえばキアEV6からフォルクスワーゲンID.3アウディQ4 Eトロン、テスラモデル3、そしてフォードマスタング・マッハEなどがそうで、さらに多くの例を挙げることもできるが、駆動用モーターはリアに搭載されている。そのおかげで、優れたパッケージングも可能になっている。

ところが、EQAはその手法を取らなかった、数少ない例外のひとつだ。

充電ポートは右リアフェンダーに設置。急速充電は最大100kWに対応するが、いまやこの数値では物足りなく感じるようになってきている。
充電ポートは右リアフェンダーに設置。急速充電は最大100kWに対応するが、いまやこの数値では物足りなく感じるようになってきている。    JOHN BRADSHAW

その大きな理由が、EQAのプラットフォームが全面新設計ではないこと。ベースになっているのは前輪駆動車用シャシーのMFAで、それを電動車用に改修して使用している。構造的にみてもっとも近いのはAクラスではなく、車名も近いクロスオーバーのGLAだ。

そのことは、エクステリアにも明確に現れている。地上高を引き上げた車体のシルエットはほぼ変わらず、デザイン要素やディテールが異なっていても、共通性は一目瞭然だ。

駆動用のリチウムイオンバッテリーは、ネット値66.5kWhの容量を持ち、補強フレームに囲まれてキャビンの床下ほぼ全面を埋めている。これは、かなり重たいユニットだ。フォルクスワーゲングループは、同様のレイアウトで約500kgというが、その容量は77kWh、同等サイズのポールスターは75kWhを絞り出す。

EQAに、重量面で取り立てて不利な材料はないが、航続距離はそういうわけにはいかない。WLTPモードの公称値は402〜423kmで、ほぼすべての競合車に及ばない。

フロントに交流非同期モーターを積んだ前輪駆動レイアウトは、効率向上に寄与しなかったようだ。四輪駆動のEVを生産するメーカーによれば、エネルギー効率や航続距離の改善に大きく貢献するのは、主要な駆動輪をフロントではなくリアにすることだという。

エントリーグレードのEQA 250は、最高出力が191ps、最大トルクが38.3kg-m。主な競合モデルに対して、パワーは劣るがトルクは太刀打ちできるレベルだ。さらなるハイパワーや四輪駆動を求めるなら、2モーターの228ps仕様と292ps仕様が選択できる。250と同じモーターを使っているが、極めてわずかに航続距離が伸びている。

サスペンションはほぼすべてのモデルで、コンベンショナルなスティールのコイルスプリングとパッシブダンパー、通常のスタビライザーを用いる。型式は、フロントがストラット、リアがマルチリンクだ。

テスト車は最上位仕様のAMGライン・プレミアムプラスで、アダプティブダンパーが標準装備される。さらに、可変レシオの速度感応式パワーステアリングが装着され、切りはじめのギア比が速くなっている。ただし、半導体不足の影響からか、現在はこの仕様が英国向けラインナップから外されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。

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