メルセデス・ベンツEQA 詳細データテスト 既存車ベースゆえの妥協 走りはほどほど 価格は高い

公開 : 2021.11.27 20:25  更新 : 2021.11.28 12:43

走り ★★★★★★★☆☆☆

EQA 250は、シグナルスタートで家族を喜ばせられるような類のEVではない。もっとも、日常的なドライビングでは、十分以上のパフォーマンスをみせる。高速道路やペースの速いカントリーロードでも満足のいく勢いがあり、市街地では融通が利いて運転しやすい。

電気モーターによる回生ブレーキのコントロールのダイレクトさや、空走での勢いの維持を可能な限り高めたことは賞賛に値する。おかげで、好みや環境に合わせた運転スタイルを見つけることが難しくない。また、EVでは見過ごされがちだが、電費を向上して航続距離を伸ばすのに効いてくることもある。

EVに期待しがちな強烈なスタート加速は味わえないが、追い越し加速は力強い。ただし、滑りやすい路面では、発進でも制動でもタイヤグリップの低さが顕著に感じられる。
EVに期待しがちな強烈なスタート加速は味わえないが、追い越し加速は力強い。ただし、滑りやすい路面では、発進でも制動でもタイヤグリップの低さが顕著に感じられる。    JOHN BRADSHAW

それを補完するのが、スポーツ/コンフォート/エコが設定される走行モードのコントローラーと、ステアリングホイールに設置された、エネルギー回生レベルを簡単かつ直感的に調整できるシフトパドルだ。開けた道でのコースティングや、一時停止などの交通法規を先読みした回生制御とも相まって、完全な1ペダル運転と効率アップを可能にする。

路面が滑りやすい状況では、明らかにスタンディングスタートでの十分なトラクションを稼ぐのに苦戦し、ホイールスピンを防ぐための電子制御がかなり介入しているのがわかる。それでも、効き具合は控えめだ。

ただし、スロットルペダルを適切に操作すれば、0−97km/h加速は8.4秒をマーク。0−100km/hの公称値が8.9秒なので、それ以上の結果だといえる。それでも、同じようなコンディションでテストしたQ4 Eトロン40にはコンマ3秒のビハインドだが。しかし、発進でのトラクションが必要ない高い速度域からの加速性能では、EQAが上回っている。

フットブレーキでの制動時には、大きめのピッチが出て、急に車体の重さを感じさせるようになる。スリップしやすいコンディションでは、発進加速時と同じく、縦方向のグリップ限界の悪影響が出てしまう。

ブレーキペダルのフィールと、踏み込みに対する制動力の増し具合は、EVとしてはまずまず。ただ、完全制止の際には、スナッチやカックンブレーキといった挙動が出てしまうこともある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。

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