【詳細データテスト】ルノー5 魅せるデザイン クラス最高の乗り心地とハンドリング 課題は高速電費

公開 : 2025.04.05 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★★★

エンジニアリングに終始するクルマもあるが、5は顔つきが魅力的だ。ルカ・デ・メオが2021年にルノーグループのCEOに就任すると、開発中のモデルを把握すべくデザインスタジオをチェックし、どれも重要だが退屈だと結論づけた。

かつてのR5に似せたスタイリングモデルも存在したが、敢えて市販化は検討されていなかった。現在はフィアットアバルトに移籍しているフランソワ・ルボワンの手になるそれは、あまりにもレトロデザインだとされたのだ。しかしデ・メオは、これこそルノーが今後取るべき方向性だと考え、技術開発の段階へと回した。

ホイールは全車18インチで、このマルチスポークはアイコニックファイブ専用。ほかの仕様は、もっと華やかな6スポークだ。
ホイールは全車18インチで、このマルチスポークはアイコニックファイブ専用。ほかの仕様は、もっと華やかな6スポークだ。    JOHN BRADSHAW

まずは2021年にコンセプトカーが登場し、量産までの時間はかかったが、基本的なデザインは維持された。短いオーバーハングと大きなタイヤ、そして5の特徴的な要素が見られる。

2022年には、EVとソフトウェアの開発を別会社のアンペアへ移管。一方で、内燃エンジンの開発と生産を行うホースを、ジーリーとの合弁で設立してもいる。

アンペアのタスクのひとつは、ルノーの新たな電動化にフィットするアーキテクチャーの開発で、今後のR4やトゥインゴにも使用されるプラットフォームのAmpRスモールが生まれた。ルノーには電動車とICE車の両方に対応するCMFプラットフォームがあるが、パーツやソフトウェアの共通点は最低限だという。

もっとも、モジュラー構造なので、既存コンポーネンツが再利用されている部分はあり、5にも新旧入り混じったところが見られる。フロントサスペンションはクリオやキャプチャーに、リアのマルチリンクはダチア・ダスターの4WD車に由来するものだ。小型車に一般的なトーションビームをリアに使うと、トレーリングアームがバッテリー搭載スペースを侵食するので、この選択となった。もちろん、乗り心地やハンドリングを、ミニ・クーパーEと張り合えるものにする狙いもあるだろう。

バッテリーの容量は、古いゾエと同じ40kWhと52kWhだが、空冷ではなく液冷となった。これは幅広いコンディションに対応することと、小型のほうは90kW、大型のほうは100kWという直流急速充電の採用を考慮してのことだ。構造も異なり、モジュールの数を減らして、各モジュールに用いるセルを増やした。

生産はフランスのドゥエー工場で、ほとんどのサプライヤーが300km圏内にあるという。2025年夏からは、そこにバッテリーパックも加わる。AESCエンヴィジョンと共同で設立した製造施設では、輸入したセルをアッセンブリーするのではなく、マテリアルから生産する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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