【詳細データテスト】ルノー5 魅せるデザイン クラス最高の乗り心地とハンドリング 課題は高速電費

公開 : 2025.04.05 20:25

内装 ★★★★★★★★★☆

レトロなテーマは、外観だけでなく内装にも及んでいる。クラシックなデザイン要素を慎重にいいとこ取りし、21世紀の技術と組み合わせた。ひと目でルノー5だとわかりながら、先進的かつオリジナルで、つかいやすいものに仕上げている。

助手席側のダッシュボードは、リブ状のステッチが入り、初代5の後期型を思わせる。しかし2面の10インチ画面を組み合わせた大きなメーターパネルは、ミドシップの5ターボを思わせる。サイドサポートが独立したような独特のシートも同様だ。

かつての5を思わせるデザインと、使いやすいスイッチ類を備え、運転環境は上々。色合いも印象的だ。
かつての5を思わせるデザインと、使いやすいスイッチ類を備え、運転環境は上々。色合いも印象的だ。    JOHN BRADSHAW

色やマテリアルも、とても効果的に使われている。すべてのシート表皮は、ペットボトルをリサイクルしたファブリック。アルピーヌ版のA290にはレザーも用意されるが、テスター陣にはこのソフトな布素材が好評だった。とりわけ、テスト車の目を引くイエローは、ありふれたダーク系よりずっといい。

効果なクルマの多くは、高品質なマテリアルや複雑なディテールを多用するが、そこにカネを払う価値があるか疑問を感じるのも事実だ。5はまったくの正反対で、価格を知らなければ、このクラスでも効果な部類だと思えるのに、実際にはむしろ安いほうだ。

もちろん、硬くてざらついたプラスティックは目に入るが、このセグメントならばそれも当然だ。それでも、そうしたマテリアルでさえ上質に感じられる。質感の低さを感じさせるものがあるとすれば、ドア開閉時にパネルから聞こえる不快な音だろう。

実体コントロール系は省略されていない。ボタンだらけではないが、操作系は入念に選ばれレイアウトされている。タッチ画面の機能も上々で、いちいち考え込まなくても使えるインターフェースを構成している。

直感的に使えるもので、ミラーの操作は一般的だし、エアコン用にはロッカースイッチが並び、タッチ画面にはコントロールバーが常設されて不足を補っている。

ちょっと使いにくいのが、コラムレバータイプのドライブセレクターだ。メルセデスではうまく機能しているレイアウトだが、ルノーのそれは右側にあり、ワイパーやメディア操作のレバーと並んでいて混乱する。Pレンジはなく、運転を終える際にはハンドブレーキをかけるだけだ。

コラムシフターのよさは、センターコンソールを収納スペースとして使えることだ。5の場合は、さほど広いスペースではないが、ワイヤレス充電器やふたつの大きなドリンクホルダー、まずまずの大きさのアームレスト内収納がある。

そうしたもろもろがすばらしい運転環境を構築し、最後のピースというべきドライビングポジションもよくできている。過去のルノーはしばしばレッグルームや太もものサポートが不足するが、このクルマには当てはまらない。座面の角度調整機構はないが、デフォルトのポジションはやや寝そべったもの。背の高いドライバーの脚もしっかりサポートし、それでいて背の低いドライバーも不具合は感じないはずだ。ステアリングコラムは手動調整式で、アジャスト幅はたっぷりある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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