スマート#1 詳細データテスト 個性的なデザイン 優れた静粛性 シャシーと操縦系は改善の余地あり

公開 : 2023.11.18 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

後輪駆動で前後重量配分は49:51、しかも低重心とくれば、優れたドライバーズカーの構成要素が揃っている。AMGではないメルセデスにファンな要素がしっかりあることはレアだが、しつけが行き届いていて、B級道路を飛ばしても満足できるものになっていがちだ。#1は、そこがやや不足している。主要な点は悪くないのだが、とにかく独特な走りの個性に欠けている。

ボディコントロールについては、特筆するような欠点はない。まずまず水平を保ち、バンプの扱いも平均的だ。グリップも適度にあるが、今回のコンチネンタルより、以前に試乗したダンロップSPスポーツマックスのほうが上だった。ステアリングは、ギア比も手応えも直感的で、大きな負荷をかけるとわずかに硬くなるが、フィードバックを多く伝えてくることはない。

ESCを切らなければ、コーナリングは穏やかで、抑えが効き、想定の範囲内。スイッチオフにすると、スロットルを緩めたりブレーキをかけたりしたときに、リアが外へ出る。
ESCを切らなければ、コーナリングは穏やかで、抑えが効き、想定の範囲内。スイッチオフにすると、スロットルを緩めたりブレーキをかけたりしたときに、リアが外へ出る。    JACK HARRISON

路面が濡れた峠道風のテストコースでは、ESCへの依存度が高い。完全には切れないが、部分的にオフにすると、スロットルを抜いたりブレーキをかけたりすると回ろうとする動きが強まる。湿ったコーナーの脱出では、リニアでなく遅れのあるスロットルペダルを踏み込んでからやや間を置いてクラッチを蹴飛ばしたようにパワーが出て、急激で予測できないオーバーステアが発生する。

それもスキッドパッドでは楽しめるが、とにかく予測不能に起きるので、スロットルでアジャストできるクルマにはなっていない。そうはいっても、それに気づくドライバーはほとんどいないだろう。ESCオフボタンに触れなければ、電子制御はスムースにパワーを抑えて、ドラマティックな状況には持ち込めないからだ。

そのため、普段の走りは地味で印象に残らない。シャシーにとってもっと悪い事態はもちろんあるが、BEVであればモーターでは生み出せないなんらかの個性をシャシーで出してほしいと求められるものだ。MG4やクプラボーンといったライバルは、それを実現している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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