スマート#1 詳細データテスト 個性的なデザイン 優れた静粛性 シャシーと操縦系は改善の余地あり

公開 : 2023.11.18 20:25  更新 : 2023.12.12 20:37

走り ★★★★★★☆☆☆☆

ライバルの多くが150kW=204ps程度にとどまる中、スマート#1はプラットフォームを共用するボルボなどと同じく、271psを発生する。必要かと問われれば、絶対ではないのだが、あって悪いというものでないのはいうまでもない。そのため、直線加速ではライバルたちを易々と退ける。

0−100km/hの公称タイムは6.7秒だが、われわれのテストではやや湿り気味の路面でも5.9秒をマークした。7.2秒だったクプラボーンが161km/hに達するタイムで、#1は180km/hのリミッターが作動する。ギア比がとくに低いわけではない。1000rpmで11.3km/hというのは、キア・ニロEVと大差ない。

パワーはあるが、スロットルもブレーキもペダル操作に対するレスポンスが予期しづらく、運転しにくさにつながっている。
パワーはあるが、スロットルもブレーキもペダル操作に対するレスポンスが予期しづらく、運転しにくさにつながっている。    JACK HARRISON

テストコースの路面が整ったストレートでは、ブレーキ性能は模範的だが、現実的なコンディションでは綻びが見えはじめる。バンピーな路面でのハードブレーキングでは、ABSが効いて、不安とは言わないが、奇妙なジャークが出てしまう。

もっとおかしいのが、スロットルペダルのチューニング。はっきりいって、並外れてプアだ。なによりもまずリニアではない。ストロークの残り半分は、ほとんど無駄になっている。操作に対するレスポンスの遅れが常にあり、それから望んだパワーが出る。そのパワーの出方も、スポーツモードではかなり早く、エコモードでは苦痛なほど遅い。そのため、ドライバーは正確なスロットル操作の感覚を身体で覚えることができないのだ。

回生ブレーキのセッティングは3段階で、スタンダード/ストロング/E−ペダルから選べる。最初のふたつは文字どおりの内容で、3つめはワンペダル運転が可能になるが、コースティングモードがないのはデメリットにつながる。

加速と同じような遅れが、減速でも生じる。セッティングとは無関係に、ペダルを離すと、1秒ほど空走したのちに回生ブレーキが効きはじめる。その後は、回生量を調整することができるものの、それを可能にするペダルトラベルの範囲はきわめて狭い。

結果的に#1は、運転が疲れるクルマになっている。回生がゆっくり効きはじめる上、わずかに減速したり、50km/h前後を維持しようとするとガツンと制動してしまうからだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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