スマート#1 詳細データテスト 個性的なデザイン 優れた静粛性 シャシーと操縦系は改善の余地あり

公開 : 2023.11.18 20:25

走り ★★★★★★☆☆☆☆

ライバルの多くが150kW=204ps程度にとどまる中、スマート#1はプラットフォームを共用するボルボなどと同じく、271psを発生する。必要かと問われれば、絶対ではないのだが、あって悪いというものでないのはいうまでもない。そのため、直線加速ではライバルたちを易々と退ける。

0−100km/hの公称タイムは6.7秒だが、われわれのテストではやや湿り気味の路面でも5.9秒をマークした。7.2秒だったクプラボーンが161km/hに達するタイムで、#1は180km/hのリミッターが作動する。ギア比がとくに低いわけではない。1000rpmで11.3km/hというのは、キア・ニロEVと大差ない。

パワーはあるが、スロットルもブレーキもペダル操作に対するレスポンスが予期しづらく、運転しにくさにつながっている。
パワーはあるが、スロットルもブレーキもペダル操作に対するレスポンスが予期しづらく、運転しにくさにつながっている。    JACK HARRISON

テストコースの路面が整ったストレートでは、ブレーキ性能は模範的だが、現実的なコンディションでは綻びが見えはじめる。バンピーな路面でのハードブレーキングでは、ABSが効いて、不安とは言わないが、奇妙なジャークが出てしまう。

もっとおかしいのが、スロットルペダルのチューニング。はっきりいって、並外れてプアだ。なによりもまずリニアではない。ストロークの残り半分は、ほとんど無駄になっている。操作に対するレスポンスの遅れが常にあり、それから望んだパワーが出る。そのパワーの出方も、スポーツモードではかなり早く、エコモードでは苦痛なほど遅い。そのため、ドライバーは正確なスロットル操作の感覚を身体で覚えることができないのだ。

回生ブレーキのセッティングは3段階で、スタンダード/ストロング/E−ペダルから選べる。最初のふたつは文字どおりの内容で、3つめはワンペダル運転が可能になるが、コースティングモードがないのはデメリットにつながる。

加速と同じような遅れが、減速でも生じる。セッティングとは無関係に、ペダルを離すと、1秒ほど空走したのちに回生ブレーキが効きはじめる。その後は、回生量を調整することができるものの、それを可能にするペダルトラベルの範囲はきわめて狭い。

結果的に#1は、運転が疲れるクルマになっている。回生がゆっくり効きはじめる上、わずかに減速したり、50km/h前後を維持しようとするとガツンと制動してしまうからだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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