【詳細データテスト】アウディRS6 圧倒的加速 無駄を削ぎ落としたハンドリング 快適性は一歩後退

公開 : 2025.02.08 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

まず言いたいのは、このGTが、ただステッカーを貼っただけのRS6ではないということ。たしかに、1989年の90クワトロGTOを思わせる、みごとなステッカーではある。アメリカのIMSAでチャンピオンシップを争った、アウディのモータースポーツ参戦の歴史においても異彩を放つ、あのマシンだ。

このGT、ボディカラーは無償オプションで黒かグレーも選べるが、それではこのクルマの狙いにそぐわないだろうというのがテスター陣の意見だ。もし、もっとおとなしい見た目の強力なワゴンがほしければ、アルピナB5GTを選べばいい。もっとも、あちらはカナードが目立つが。

ボンネットとフロントフェンダーはカーボン。通常のRS6との識別点のひとつだ。
ボンネットとフロントフェンダーはカーボン。通常のRS6との識別点のひとつだ。    MAX EDLESTON

RSGTは、ネッカーズルム工場の研修生たちが発案したプロジェクトからはじまった。2020年、ボディワークやメカニックなど、各部署から集まった12名のティームが、RS6GTOプロジェクトとして、アウディでアインのサポートを受けて6ヶ月活動。RS6GTは実質的に、ここで作られたコンセプトモデルの市販版で、スタイリングは忠実に再現したが、4.0LのV8はむしろパワーアップしている。

そのほか、通常のRS6から明らかに変わっている点は、控えめな主張とは正反対といった感じのホイールだ。1990年代から200年代初頭のSモデル、たとえば8L型S3などを思わせるデザインだが、サイズは22インチと巨大だ。

また、新形状のスプリッターや、グロスブラックのグリルも目を引く要素で、実際以上にボディをワイドに見せる。ボンネットとフロントフェンダーは、カーボン素材を採用した。前輪後方には、エアアウトレットを設置。リアスポイラーも、センターにステーのある専用品だ。

これらを組み付けるため、ベーリンガー・ホフ工場で仕上げる必要がある。作業を担当するのは、とくに熟練した腕を持つ7人の職人だ。

エンジンは4.0LのV8TFSIで、630psと86.7kg−mを発生。48Vシステムは装備するが、大掛かりな電動化は一切ない。トランスミッションは8速トルクコンバーターATで、当然クワトロことフルタイム4WDシステムを搭載。センターデフロックと、クワトロスポーツ・リアLSDを備える。

いっぽう、サスペンションはガラリと変更。RS6のアダプティブダンパーとエアチャンバーに代えて、車高調整式コイルオーバーを設置。ダンパーは、低速/高速の縮み側と、リバウンドとをアジャストできる。ただし、セッティング変更は楽な作業ではない。とくにリアは厄介だ。リフトアップして、クラッディングをいくつか外さないといけない。ほとんどのオーナーが、出荷状態のまま乗り続けることになりそうだ。

一応、調整範囲を紹介すると、3つの要素とも13段階設定。アウディの推奨は、公道ではリバウンドが前6/後10、コンプレッションは低速が前後とも8、高速が前10/後6。サーキットなら4/3、2/7、4/4だという。また、オーナーズマニュアルでは、前後の差を極端にすると、ハンドリングのバランスがデンジャラスになると警告している。前後差は9クリックを超えないように、とのことだ。

さらに、スタビライザーはフロントが30%、リアが80%強化されている。スプリングレートも上がっているが、詳細な数値は非公開だ。

車両重量は、テスト車の満タン時の実測で2144kg。公称の2075kgよりは重いが、2020年にテストしたRS6の2217kgよりは軽い。

記事に関わった人々

  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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